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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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2/13 pm23:30

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「なんて、冗談です。恋人でもない人に、その前に男同士なんですけど、キスされたら気持ち悪いだけですよね」
 なにか大切なモノを失ってしまった気もするが、臨也とはいえこれならばダメージを受けるはずだ。掌に小さなチョコレートしか武器がない状況では、一番効率的で効果的な方法だった。だったと思う。そうでも思わなければ、こちらの払った代償は大きすぎる。
「これでチャラってことでいいですよね」
 未だ固まったままの臨也に更に追い打ちを掛ける。あれほど、欲しいと言っていたのだからこれで引き下がって貰わないと困る。一番困るのは、本当に彼が喜んでしまっている場合だ。
 漸く動き始めた臨也が初めてしたことは、唇を指で撫でてことだった。まずは、ソコを確認する。そして、口内に残るチョコレートを租借した。
「俺はお返ししたいな、帝人君からのプレゼントだし」
「結構です」
 復活してきた臨也はいつもの調子で語り続けるが、荒ぶる感情を押し殺してその言葉を否定していく。ここで貰ってばかりでは、彼に弱みを握られたも同然だ。なるべく、借りのようなモノを作りたくはない。
「そんなこと言わずにね、来月楽しみに待っててよ。何百にも、何千にも、何万にもするからさ」
「要りません」
「照れ屋さんだな、慎み深いとこもいいなぁ」
「分かりました。慎み深い方がお好きならば帰って下さい」
 貞淑な相手ならばこんな深夜に相手を迎えることはないはずだ。さらに、彼からのプレゼントを拒否するのも理に適っている。その好みのようにしているのだから、もはや彼には引き下がるしか術はないはずだ。
「わかったよ。今日のところは帰るよ」
 せっかく、俺の好みに帝人君が合わせてくれてるんだし、と続けて臨也は話していたが聞き流した。黙れと怒鳴りたかったが、むしろ無反応こそ彼には答えるのではないかと気がついた。
 なにか反応を返せば彼を楽しませるだけだ。そう思うと、あの返し方は失敗したのだろうか、それでもあれ以降、臨也が触れてこないのは収穫だ。なにより、帰ると言わせた。
「じゃあ、またね。帝人君、おやすみ」
 軽やかに臨也は扉に手を掛けていた。何事もなかったのかのように扉は開き、冷たい外気が流れ込んでくる。
「おっ、おやすみなさい」
 人好きのする笑顔で小さく臨也は手を振っている。その顔が見える範囲が徐々に狭くなっていく、薄く伏せられた瞳だけが隙間から覗かせ、その瞳がゆっくりと開かれ、ニヤリと微かに覗かせる口端が動いた。
「……いい夢を」
 本当に夢ならばいい。今見ているこれが夢であればどんなにいい夢だったろうか、これから見るどんな夢よりもその方が嬉しい。夢ならば、未だ唇に残る他人の感触も無かったことに出来る。
 扉が閉まっても暫くは耳を澄ませていた。まだ何かあるかも知れないと、携帯を取りに行きたかったが、その隙に何かあったらと思うと、重く古い扉を凝視するしかなかった。
 カン、カンと軽く鈍い音を階段が奏でている。臨也のソレであろう足音が徐々に小さくなる度に安堵が増していく。
 音が完全に途切れるまで、冷たい扉に耳を傾けていた。身体が冷え切っている。ぶるりと身を震わせてから、温かい室内へと戻った。
 電源の入ったままのパソコンは、先程までのチャット画面を映し出している。室内は何一つ変化はない。画面に映るログにも変化はない、あの話題がこんなことになるとは思わなかった。
『いい夢を…………』
 帰り際の言葉が胸に響く。本当に夢ならよかった。現実にあった事とは思いたくはない。布団をかぶり身を丸くする。このまま眠りにつけば、全ては夢だったのだと、都合のよい朝が来ることを望みながら瞳を閉じた。


 心のどこかで、目覚めと共に新たな非日常の訪れを望んでいる自分がいた。








作品名:2/13 pm23:30 作家名:かなや@金谷