砕けた海で描く
おまけ
どこかの大学のキャンパスでの会話。
「せんぱーい!新しい非日常のネタ見つけましたよ!」
「え、どこ?」
「今度はシルクロードです!今度の春休みに行きませんか?絶対先輩を楽しませてみせますよ」
「うーん、面白そうだけど、僕は北欧に行きたいんだよねえ」
「え。まあ、その方が危険は少なそうだし、いいですけど。じゃあこの件はゴールデウィークにしますか。それで何に興味を持ったんですか?」
「うん、セルティさんみたいな妖精がいるかなあと思って」
「故郷ですもんね。杏里先輩には言いましたか?」
「え、言ってないよ」
「……せめて、報告だけはしていきましょうよ…。こないだなんて俺斬られかけたんですからね」
「でも、心配掛けたくないし…」
「言わない方がよっぽど心配になりますよ。いい加減学習してください。また怒られたいんですか?」
「この前のは怖かったねえ」
「アマゾンの奥地に行ったまま数週間行方知れずになれば、普通キレます」
「でも、ちゃんと君は連れてっただろう?多少の危険はあるかもしれないけど、君がいればなんとかなる気がするんだよね」
「……」
「どうしたの?顔赤いよ」
「先輩、それ天然ですかわざとですか。口説いてるならのっちゃいますよ」
「なにそれ。今更君を口説く必要なんてないでしょう」
「……。もういいです。一生着いていきますから」
「それも今更だよね」
「先輩、好きです」
「知ってるよ」
杏里ちゃんは最強の護衛になるとはわかってるけれど、折角ふたりきりの上に自分だけを頼ってくれるという状況を壊したくない青葉くんと、その思惑を知っているけど、杏里ちゃんを危険な目にあわせたくないからあえて置いていく帝人くん。
そして、二人の考えを知った上で見守りながら、ときどき青葉を切っておこうかどうか迷う杏里ちゃん。帝人くんの楽しみを奪いたくないし、青葉が今度は全力で守ることを知っているので、一応保留にしています。
付いていかないのは、帝人を罪歌から守るために、近づきすぎないようにしているのと、二人を見ていると、ついむかついて青葉を切りそうになるから。
本当に帝人が危ない時は前に出てきて戦う女の子です。一見健気に見えますが、帝人からの好意を受けながら傍にいれる絶好の位置をキープしているので、彼女にとってはこれ以上ない幸せな状況なのです。