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「あーゆーときの姉さん、一番きれいだよね。俺もすごく嬉しかったんだ。本当だよ。
 でも……なんでかどんどん寂しくなって。お酒呑んで寝ちゃおうって思ったんだけど、胸が重くなるばかりで眠くならないんだよ~」
「それでここに?」
 問うと、フェリはがばっと身を起して「だって一人だと寂しいじゃないか! 色々考えちゃうし! どうしてルッツは平気なんだよ、不公平だ!」と叫んだ。
 八つ当たりの極みだ、とルートはため息をつく。
「別に平気じゃない。俺にも寂しい時はある」
「そうなの?」
「当たり前だ。俺を何だと思ってるんだ」
 真顔で問い返すと、フェリはちょっとうつむいて言葉をこぼす。
「だって、ルートが俺んちに突然来ることも、電話で愚痴ることもなかった……よ……」
 あ、そうか。と呟いて、フェリは肩を落とした。
「そっか。ギル兄ちゃんとかフラン兄ちゃんとかローデさんとか、話を聞いてくれる人はたくさんいるよね」
 一人で納得して、フェリは再び寝具に潜り込む。それを押さえて、ルートは無理やり彼をベッドから引きずり出した。
「勝手に結論付けるな! 誰がいつあいつらに泣きついたって?」
 そんなことは絶対無い。 と断言すると、フェリはやっとルートの顔を見上げた。
「じゃ、寂しい時お前はどうしてるの?」
「我慢する」
 即答で言い切られ、フェリはくわっと目を見開いた。
「何それ! どうして溜めこんじゃうんだよルッツの馬鹿! 俺、じゃなくてもギルでも菊でもいいけど……。とにかく何か言ってよ。俺、お前が一人で耐えてるのって、何か嫌だ!」
 多分こいつと俺では、「寂しい」の閾値が違うんだろうと思いつつ。なんとかなだめようとルートは言葉を探した。
「そうか。では、こうしよう」
「ん?」

「その時は、お前の胸で泣いてやる」

 あっけにとられてルートを見つめていたフェリの顔が、見る見る赤く染まる。
「え。ちょっとルッツ。それってものすごい殺し文句だけど、自覚ある?」
「そうなのか?」
 平然としているルートを見て、フェリは気がついてしまった。
「あ! お前、『そんな事態は起こらない』って思ってるだろ! だから平気なんだ!」
 酷いずるい嘘つき~、本当にドキドキしたのにっ! あんまりだ、俺の純情を返せ~。と、ぽかぽか殴られるルート。
 嘘をついたつもりのないルートは、困り果ててしまった。
「確かに、俺がお前に泣きつくシチュエーションが想像できないのは事実だ。だが、嘘とまで言われるのは心外だ」
「じゃ、今試そうよ」
 ベッドに座りなおしたフェリは、両手を広げてルートに笑顔を向ける。

「さあ! 俺の胸に飛び込んでおいで!」

 裸で胸を張られても、威厳のかけらもない。せめて真面目な顔をすればいいのに、この状況が気に入ったのか表情は緩みっぱなしだ。
 腹が立つような、情けないような、笑いたいような世にも複雑な感情を持て余すルート。
 自分が言いだしたことなので引くに引けず、仕方なくルートはフェリの胸に飛び込む……というより、頭突きをかました。
「ヴェ?」
 本当に実行するとは思ってなかったのか、フェリが驚いたように声を上げる。だが、そっとルートの頭を抱いて、嬉しそうに笑った。
「大丈夫だよ。俺がここにいるよ」
 ルートの金髪に、フェリの顔が埋まる。
「ずっと、『君』と一緒だよ」
 微妙な言い回しが心に引っかかるルート。だが、彼の頭にしがみついたフェリがすすり泣く気配がしたので、何も言わずに好きにさせることにした。
「慰める方が泣いて、それでいいのか」
「いいんだよリハーサルなんだから!」
 何でこんなことになったんだろうと途方に暮れながら、結局フェリが泣き寝入りするまでこの体勢で耐えた。
(まあ、こいつも気が晴れたみたいだからいいだろう)などと納得してしまうところが、すでにオカシイということには気がつかないルートだった。
 
 終





作品名:そのための場所 作家名:玄水