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まさきあやか
まさきあやか
novelistID. 8259
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きよしこのよる / セフィクラ

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さて、12月である。人工都市であるミッドガルの冬は冷える。
 しかし、そんな中だろうが神羅士官学校の生徒たちは日々訓練や座学に明け暮れるのだが、さすがにこの時期は野外訓練の類はない。――死人が出かねない。
 そんなわけで、冬の長期休みも近いと言う事もあって、十二月に入ってから生徒達も何処か浮足立っていた。
 そんな中で、クラウドをはじめとする同期の奨学生は去年は神羅のパーティーに引っ張り出されていたこともあって、今年のクリスマスをどう過ごすかと言うのが目下の関心ごとであった。

「クリスマス?」

 今年の24日、25日はどうするのかと言うクラウドの問いにジタンは「あ、オレはLovelessのクリスマスから年末の特別講演の手伝い入ってる」と答え、バッツも「ボコに会いに帰る!」とあっさりと返ってきた。

「お前たちに聞いたオレがバカだった…」

 お前たちは聞くまでもなかったな。と、頭痛を押さえるようなクラウドにセシルが珍しいね。と柔和な笑みを深める。
 クラウド、ジタン、セシル、スコールの四人部屋にバッツが遊びに来ている――と言うかクラウドに抱きつきにきている――と言う状態でのクラウドの発言だったのだが、珍しいと言うセシルにクラウドが首をかしげた。

「何がだ?」
「クラウドはあまり、こう言ったイベントに興味がないと思ってたから」
「興味はないな」

 セシルの言葉にクラウドは否定することなくあっさりとうなずく。すでに数千年の時を生きている彼にとってみれば大昔の聖人の誕生日など興味の対象ではない。
 そう言うクラウドに「じゃ、なんで聞いたんだ?」とジタンが首をかしげた。

「いや、ルーファウスがな…」

 何とも言えない表情でクラウドが口にしたのは、彼らが所属している神羅カンパニーの副社長の名前だ。年はジタン達とあまり変わらないが、現在はジュノンの支社長を兼務している。

「こっちに戻ってくるのか」
「あぁ」

 今まで雑誌を無心に見ていたスコールがそう尋ねると、クラウドがうなずく。対テロ対策で社長をはじめとする幹部役員達の所在や行き先が公開される事は少ない。
 それでも直接聞いていれば話は別だ。他言無用だぞ、と言うクラウドに彼らも心得ているようにうなずく。

「スコールの親父さんは?」
「さぁ?」

 同じ理由でスコールの父親であるレウァールジュノン副支社長の参加も当日になって知らされることになるだろうが、息子なら何か聞いてないのかと言うジタンにスコールは首を振るだけだ。

「来ても来なくてもうるさいだけだ…」

 そう言ってため息をつくスコールに、セシルたちは顔を見わせて何とも言えない笑みを浮かべる。一時期の確執がなくなった親子は見ていて微笑ましいものがあった。

「んで、副社長がなんだって?」

 バッツが話を戻すと、クラウドは「そうだった」と手を叩く。

「実家に戻らないならパーティーに出ろって言うんだ」

 一人が嫌なら同級生でも誘って、と言うルーファウスに最初はなんとか断ろうとしていたのだが、先日のザックスおよび数人のソルジャーが損壊した設備の弁償――早い話が予算削減――をちらつかされ、ソルジャー部隊統括のラザードに懇願されてしまったのである。
 もちろんザックス以下エッサイとセバスチャン、カンセルにはクラウドが正義の鉄槌を振り落とした事は言うまでもない。
 そんわけで、正式にセフィロスからも依頼をされてしまったクラウドに逃げ道がなくなってしまったと言うわけだ。

「生贄を探してたのか」
「そうとも言うな」

 スコールの言葉に悪びれなく頷くクラウド。ジタンが顔を引きつらせる。もしバイトが入っていなければ今年もパーティーで見世物になるところだったのだ。

「あ、でもセシルは出るんだろ?」
「カウントダウンの方はね」

 ジタンの言葉にセシルが苦笑いを浮かべる。年末年始は警察幹部である兄が忙しいため婚約者と共にパーティーに出るが、クリスマスは家族で過ごすのが例年なのだそうだ。
 セシルがたったひとりの兄を大切にしている事を知るクラウドはそれに深く頷くと、スコールへと視線を向ける。

「オレは出ると思うが…」
「彼女とだもんなぁ~」
「デートだもんなぁ~」

 何とも言えない表情を浮かべているスコールにジタンとバッツがここぞとばかりに冷やかす。普段はめったに表情を変えない――それでも最初に比べれば随分と表情豊かになったが――スコールなのだが、恋人が絡めばこの限りではない。
 しかし、スコールはそんな二人にふっと遠い目をした。

「パーティーに出ていれば、よくわからない多国籍料理とか創作料理を食べずに済むから…」

 ちなみに彼女の恐ろしい手料理は彼女の父親も被害にあっているようで、娘とスコールの交際にあまりいい顔をしない彼もこればかりは諸手を挙げてパーティーの招待状を贈ってくると言う。

「あぁ、試作とか、味見とか、あるよ、ね」
「がんばれ、スコール!」
「彼女、金持ちでよかったよな!」

 結婚しても料理は専門の人に作ってもらえ。と、口々に励ます同級生たちは、彼女が結婚したら自炊派である事を知らない。

「ライトでも誘ったら?」

 フリオニールは実家に帰っているかもしれないが、ライトは調整がつくだろう。と言うジタンに、クラウドもそれが一番だろうと頷いた。

「それで、スコールはさっきからなにを熱心に見てるんだ?」

 一応の話がまとまったところでバッツが尋ねる。スコールの愛読書である月刊武器かと思ったが、どうやら違うらしい。
 かと言って、シルバーアクセやカードゲームの雑誌でもなく、彼女へのクリスマスプレゼントでも探しているのかと思えばどうも男向けの内容だ。

「いや、今月の22はサイファーの誕生日なんだ」
「サイファー?」
「ほら、スコールの幼馴染の、セカンドの」
「サー・アルマシー」

 それぞれの人物照会が終わったところで、スコールが深いため息をついた。どうやら彼の誕生日プレゼントで悩んでいたようだ。

「って言うか、いくら幼馴染でも野郎にバースデープレゼントとか贈るかぁ?」

 女好きのジタンの尤もな疑問にセシルは困ったような笑みを浮かべつつも否定はせず、幼馴染は女性のティファしかいなかった――いや、村には当然男子もいたのだ、クラウドにはすでに忘却の彼方だ――クラウドにはわからない。
 バッツに至ってはたとえ女性でもそのあたりは察しない究極のフラグクラッシャーである。

「オレだって贈りたくて贈るわけじゃない」

 憮然、と吐き捨てるスコールに、ジタン達は顔を見わせた。
 その後、聞いたところによれば彼の父親と和解することができた去年のクリスマスパーティーは彼の尽力によるところが大きく、礼の一つでもしやがれ、とねじりこまれた結果らしい。

「あいつとは趣味が合わないんだ」

 そういいながらも再び雑誌に戻ってしまったスコール。取り残された四人は何とも言えない顔でお互いの顔を見わせ、クスリと小さく笑みをこぼした。

「それじゃ、出かけようかスコール」
「は?」

 なんでだ?と言う顔をするスコールにセシルは例の押しの強い笑みを浮かべる。