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さらんらっぷ
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novelistID. 17853
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歓喜の歌は己が為に響かせる 前編

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耐え切れず、俺は手で拳を作り机を叩いてしまった。
「もったいないってどういう意味だよ。」
「……いや、ただここだけで終わらせるのはもったいないぐらい巧いって思って――。」
「そう。」
これ以上、ここにいたら怒りに耐え切れず泣いてしまうかもしれない。
「すみません、席、外しますね。」
鬼道さんに一礼し、教室を出た。結局、売店のパンは食べていない。


 教師に次の授業は休むと告げ、保健室に向かった。相当、顔色が悪くなっているらしく先生は俺をそのままベッドに眠らせてくれた。空調の効いた保健室は居心地がいい。何度も寝返りしながら、先ほどのことを悔やんでいた。なんで、あんなことで怒りが湧きあがってしまったのだろう。掛け布団を頭にまでかぶって、唇を噛んだ。
 どうにもこうにも、演奏会の練習に入ってからの俺は変だ。理由はわかっている。俺は必要じゃない人間だと言われているんじゃないかと、思っているんだ。
総帥、そして鬼道さんまで俺をこんなところに寄越すだなんて……!
 そして、「もったいない」「もったいない」「もったいない」――うんざりなんだ。
「オーケストラなんて、出るんじゃなかった……。」
まさか、こんなにも自分が困憊するなんて夢にも思わなかった。焦りが焦りを生み、今、こうしているだけでも力が衰えていくように感じられた。ただでさえ、今の俺が鬼道さんの参謀たりえているのかも不安だった。鬼道さんの隣を想像したとき、今の俺にはあの源田が映るのだ。悔しくて拳をベッドにたたきつけた。