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前世を言い出したら終わりだよ

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晴れた昼休みに屋上へ出たら、友人が打ちひしがれていた。
「・・・どったの、伊達ちゃん?」
「・・・・・・なんでもねえ・・・。」
オットコマエな低い声が掠れていた。
友人は給水塔の壁に凭れて、顔を髪で隠していた。
表情を見られたくないときに良くやる仕草で、顔色が確認できないから体調不良かどうかわからない。
それでなくとも、右目を隠すようにそこだけ前髪を下ろしているので、今は顔が全く見えない。
右目を隠すのは、義眼だからだ。
生まれつき、眼が無かったのだという。
今より身体ができていないときは、成長期って事もあってなんだか柔らかい素材で出来た義眼を空っぽの眼窩に入れていた。
それは白みがかって出来ていて、どうしても異形だった。
見る人を驚かせていたから憚ってアイパッチをしていた。
とても精巧な固いプラスチックか何かで出来た、本物の眼そっくりの義眼をいれたのは二ヶ月ほど前で、それをこの友人は喜んでいた。
それ以降、アイパッチもしなくなったけど、やっぱり周囲を憚って前髪で目を隠していた。
意外に繊細なんだから、と苦笑したのもその頃。
今更、その繊細さが細い針となって神経を突いたのかな?と顔を覗こうとしたら、丁度そのタイミングで唸ったもんだから、思わず背筋を伸ばした。
「・・・そういや、佐助か。テメエ、知ってやがったな?」
険のある声音で吐き捨てられてギョッとした。
ギン、と音もしそうな鋭い眼差しがこっちを射抜く。
え、なに、何のことってかドレのことよ?
正直に言って、佐助は学内情報屋みたいな立場に居るもんだから、この友人が言っている意味がいろいろ当てはまりすぎて困る。
例えばファンの女の子たちが情報交換メーリングリスト作ってることとか、共通の友人のチカちゃんが誕生日プレゼントにってこっそり手作りで洋服を作ろうとしてることとか、気に食わないって息巻いてる先輩方が徒党組んで何かしようとしてるとか。
「・・・えーと・・お昼、まだでしょ?パン食べる?」
とりあえず誤魔化して見ようと思うけど、場つなぎにもならなかったらしい。
「No,thanks.弁当がある。ていうか、お前だよな、ヒトの弁当食って、また一緒なんだっつったのは!」
ゆらり、気炎を纏って立ち上がる姿は迫力がある。
見蕩れそうになるのと同時進行で、得心した。
ああそうか、そうだったのか、ソッチの知ってるだったのね。
そうとわかれば話は早いし、動揺も収まる。
することは決まった。
「お昼食べながら話そうよ、座って座って。」
ぺとん、と重力に任せるように地ベタに胡坐をかいて座れば、チッと舌打ちされた。
それでもこんなザラザラのコンクリートに正座して重箱仕立ての弁当を膝に乗せるところが、らしい。
行儀がいいんだか悪いんだかってところ。育ちが良いんだろう。
「忘れもしねえ、オレの卵焼き横から摘み食いして、旨いの一言も無くだったよな?」
「いや、そこなの?怒ってたのってそこなの?」
「オレのために作られた卵焼き食って感謝の一言も無かったからな、よっく憶えてんだよ。」
Survey? と、映画で憶えたんだろう言葉を使いながら、弁当の風呂敷を広げる。
コレは今回初めて聞いたなーと笑った。あ、ツナパン美味しい。
「笑ってんじゃねえ。ヒトの弁当食って、一緒なんだってのは何が一緒なのか言って見ろ、この猿!」
「昔も言ったと思うんだけどさあ、分かってることあえて言わせようとするの趣味悪いよねえ?」
咀嚼の合間に溜息吐けば、伊達ちゃんも溜息を吐いた。
これは意外だったから、眼を瞬いた。
「・・・不安なんだよ、お前の口から聞きてえ。」
「あらー、信じらんないくらい素直だねえ。やっぱ最近人間が丸くなったと思ってたの気のせいじゃなかったんだ。」
「Shut Up!」
「・・・気は荒いまんまだけど。だってさあ、今日のお弁当だって、野菜から片倉さん手ずから作ったんでしょ?伊達ちゃんのお目付け役だって?小十郎さんの今の立場って。味、生まれる前とおんなじよ?」
一息に言えば、今生では友人の間柄、前世は何か一言では言えないカンジな敵の総大将だったヒトは空を仰いだ。
そう、そういうことだ。知っていたというのは生まれる前、前世の話。電波だよねえ。
でも、実感として知識としてあるのだ。ずっと昔むかーしに、俺様は生きていた。
そして死んだ。その一生の鮮烈な記憶。やっぱ電波だ。
電波な話のクセに共有できそうなヒトってのは、案外周囲にいて、伊達ちゃんもその一人だった。今日まで思い出す素振りも無かったけど。
「そっか、同じ味か。なら、小十郎だな、うん。」
心底安堵したっていう顔で、漸く箸が弁当に触れる。
ショックだった。それを確認するまで、弁当が食べられなかったらしいところが。
「・・・・・・え。何ソレ。何ソレ!!自信無かったっての?!嘘でしょ??!!
だってアンタ伊達政宗でしょ?!!」
今日一番動揺して捲くし立てれば、指差された本人は困った顔で苦笑した。
「元、な。思い出した、っつーか知識として降ってきたのは本日先程ってとこだが。」
先刻まで打ちひしがれていたのは、どうやらその電波っぷりにらしい。同じ立場の俺様がいることに勘付いて、どうやら伊達ちゃんは立ち直ったらしいが、こっちは逆に動揺しまくりだ。
「うっそ、マジで自信なかったの?!自分の右目とか言った片腕どころじゃない従者を?!!アンタがそんなならウチの旦那、俺様のことどう判断するのよ?!」
「いや、お前のところは大丈夫だろ。」
取り乱してるこっちを気にもせず冷静に言うもんだから、逆ギレした。
「根拠無いでしょ!!ウチの旦那の鈍さバカにしないでくれないっ?!」
「オレのところが特殊なだけだ。・・・今オレの傍にいる小十郎が、何代目か、お前言えるか?」
「・・・へ?」
問われて俺様はまた目を瞬いた。
「片倉小十郎の名前はな、代々受け継ぐものに、最初の、オレの右目だった小十郎が決めたんだよ。
だから息子も孫も、そのずっと子孫の今のやつも小十郎って名前なんだ。
しかもスゲエぞ、あの遺伝子。顔とか仕草とかホントそっくりでよ。
政宗だったときに、子供の小十郎も親父の跡継いで仕えてくれたんだが、あんときも料理の腕とか以外は本当にそっくりで・・・。」
「・・・・・なんかもう、片倉さんの遺伝子って・・・」
「皆まで言うなよ。」
「・・・愛と執念と忠誠のドレ感じたのよ?」
「言うなっつってんだろっ!!」
涙目になって怒鳴る姿がちょっと可愛らしい。
今生でも前世でもまるでイメージじゃないから可笑しかった。
「あーまー、でもそれなら仕方ないか、な?ちょっと意外だけど。判断材料、全然ないんだ?」
「・・・本当、良く似た親子だったんだよ。考え方はちょっと違ったみたいだけどな、オレへの接し方はマニュアルあったろアレってくらいで・・・。」
「・・・うっわー・・・。どうしよ、あんぱん味しなくなっちゃったんだけど・・・。」
「キモイとか言うなよ?!大事にしてくれてるってだけなんだからなっ?!!」