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前世を言い出したら終わりだよ

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ああ、むかーしの記憶があってもやっぱりコノヒトは俺様と同じで、現代の価値観を持ってる。それに、ちょっと安堵した。やっぱり今生は今生だもん。今を大事に生きましょう、過去には振り回されるのは良くないよね、やっぱ。
「いやー、言わないよー。ただ、ごちそうさまーっつか、甘くて砂吐くーっていうか。」
「・・・Pardon?」
「だって伊達ちゃん、それでも最初の片倉小十郎サンが傍にいるの嬉しいんでしょ?」
指摘すれば、色白の肌が一気に赤くなった。
うん、コレ見たかったから言ってみたんだよね。ヤバイ、楽しすぎる。
が、こっちがそれは楽しそうに相好を崩していたからか、スッと伊達ちゃんは冷静になったらしく、血の気がまた元に戻って平静な顔でこう言った。
「ま、小十郎はオレのものだからな、当然っちゃ当然だぜ?」
「ちっ、つまんね。」
「お前を愉しませて堪るかよ。」
「意外と楽しいんだよね、気付いた瞬間のヒトって。」
「あー、ウチの学年、多いよな?」
「チカちゃんとか、全然気付いてないけど、あれはアレで幸せそうだから、見てて楽しいしね。」
「・・・やっぱ、チカはそうなのか?」
「可愛いものとかキラキラしたのとか好きな、でもってパソコンを組み立てからプログラミングまでしちゃうアルビノでオッドアイの共通の友人なチカちゃんのことなら、そうだよ。四国の。」
「苗字違うから現実から眼を逸らしたかったんだけどな・・・アイツんち、無くなっちまったもんな・・・。」
「そうだねえ。ま、言っても今生には関係ないし。今も昔も仲いいんだから良いじゃん?」
「・・・この間、ゴスロリの浴衣に眼ぇキラッキラさせてたんだよな・・・」
「・・・それは止めよう。前世がどうとかじゃなくても。デコケータイまでならイケるけど、ゴスロリは隣歩けないから俺様・・・」
しばしの沈黙が漂ったが、それを払拭すべく伊達ちゃんは話題を変えた。
「あー、あとは毛利かな、何か眼の敵にされてるのは、やっぱソレか?」
「あー、うん、毛利サマね。なんか入学前くらいから知ってたっぽいね。学年トップ死守してるから成績いいヒトは皆眼の敵だけど、伊達ちゃんは10番以内に引っかかってる程度だから、ホントは眼の敵にされないはずなのにって毛利サマ七不思議だもんね。」
毛利元就は前世の雰囲気をそのまま引き摺って男に転生したらしい。
学年トップと全国首位をとにかく守っていらっしゃるその高飛車な性格に、意外なカルト趣味があるという人物特性が加わって、サマ付けまでを徒名にしている。気圧されて敬語になっちゃう教師も多数。
入学当初、知ってるのか知らないのかわからなかったので、通りすがりに「お餅好き?」って訊いたら「お前からは団子は貰わん」と返されてしまった。
それで知っていると確定したヒトだ。
旦那からなら団子を貰う気はあるんだなーと思うと微笑ましかったけど、未だ旦那は知らないままだから、そっとしている。あんまり接触はない。
「家康、はイッコ下だったか。」
「そうだねえ。島津のおじちゃんは、うちのクラスだよ。なんでか陸上部。面変わりが激しいから、分かりにくいかも。」
「探してやる。」
「難しいよ~。南のヒトは外見全然違うから。宮本は美術部だし。この間、思い出したらしくって、全然違う絵を描き出さなきゃわかんなかったよ、流石の俺様も。」
「ああ、それでか!風景画一本だった奴がいきなりグロいの描きはじめたから何かあったんだろうとは思ってたけど!」
「そっか、そっちのクラスだっけ。委員長は心配してたんだねー。」
「抜かせ。あいついきなり教室で叫んで、そのまま休み時間だろうが授業中だろうがあのグロい絵を描き続けたんだぜ?
古典の先公がビビッちまってクラス崩壊しかかったんだよ。気にならねえ方が可笑しいだろ。」
「それ聞いた。そのときに思い出しちゃったんだろうねえ。」
「ん?Wait. てことは、古典の授業が悪かったのか?」
「さあ、どうだろ。アレにそんな条件なんてあるのかなあ?俺様は小学校のころだったけど、特に誰かに会ったとか懐かしいものを見たとか、そういうの無かったよ?」
憶えている。
背中に鞄を背負っていた。ただの、いつもの学校の帰り道だった。
身体の中で、かちりと何かが噛み合う音がした。
え、と思って足元も見たが、何も無く。
顔を上げれば夕陽が眼を灼いた。
辺り一面、真っ赤で。
それで俺様は、ああ旦那の色だ、と思ったのだ。
そうしてとても古い記憶があることに気がついた。
「ああ、俺もだ。」
「ちなみに、かすがもそうだって。今、インターナショナルスクールに通ってるよ。」
「・・・あいつもか。ってことは・・・。」
「うん、謙信公はヴァイオリンの先生なんだってさ。」
憶えているかどうかなど関係ないっ!!とか言い切ったかすがは相変わらずだった。
けど一度、遠目に謙信公を見に行ったら、気付かれた。
かすがには言ってないけどアレは絶対、過去生を知ってると思う。
だって、500メートル先にいた俺様に微笑みかけたんだぜ?色々とありえないでしょ、軍神さんってば。
でもそれで、芋ズル式にお館様を見つけて、旦那も見つけた。
お館様は指揮棒を振ってオーケストラを率いていた。
あれは意外と体力を尽くす立場らしくて、日々の鍛錬が必要だとかで、道場まで持っていた。
旦那はそこにいたのだ。
音楽家の道場らしく、弓用の巻き藁まであった何でもアリな道場で、相も変わらず槍を振り回していたのを見て、俺様ってば危うく落涙するところだった。
それでいて、お館様と同じ指揮者になるために腕を鍛えるのだと言ったのだから、俺様は床に突っ伏した。
「で、幸村はどうしてるんだ?お前のことだから見つけてるんだろ?」
にやり、と好戦的な表情で元・政宗がタイミングを計ったように聞いてくる。
その表情をちょっとだけ見つめてから、俺様は嘯いた。
「・・・知ーらない。」
「No,kidding! んなわけねーだろ?!謙信公を見つけたんなら、芋ズル式に信玄公が見つかるだろ!そしたら幸村だってセットに決まってるじゃねえか!!」
「うわー・・・。その通りだけど無性に認めたくなーい。」
「Ha!謀ろうなんざ甘いんだよ。そういう態度ならこっちから会いに行くぜ?ったく。」
「あー、それはナシ。旦那、まだ思い出してないからさ。」
「A-?まだなのかよ。とろいんじゃねえのか?」
「おんなじことを、俺様は伊達ちゃんにも思ってましたー。」
「チッ。仕方ねえ。幸村が思い出すまで待ってやることにするぜ。その方が面白そうだからな。」
ニタリと悪辣に笑う顔は、正に奥州王だったころの表情だ。
「そうそう、出会いは劇的に、ドラマチックなのがいいよね。」
笑って俺様は、空になったカフェオレの紙パックを床に置いた。
ふと目に付いた、伊達ちゃんのスカートから覗く膝小僧が寒そうだった。