振り向かせてやる!
ギルベルトは帰り道、公園に寄っていた。ジャングルジムの頂上に座り、ぼんやりと景色を眺めていた。住宅地から離れた高台にあったので、それなりに見晴らしはよかった。
――― あー、何考えてんだ俺は。
別に態度が違ったって、親友に変わりないんだからいいじゃないか。今までみたいにお茶を飲んで、菓子を食べて、雑談して。変に考えたのがいけなかったなと、ギルベルトは反省した。
――― フランシスとかアントーニョとは幼馴染なんだし、態度なんか違って当然だな。
細かく考えたのがいけなかったんだ。そう結論付けた。
「っし、解決したぜ!」
そう叫びジャングルジムの上で立ち上がった。
「ギルベルト!」
声のした方を見れば、息を切らしたアーサーがいた。
ギルベルトはひょいとジャングルジムのてっぺんから地面へと飛び降りた。衝撃を膝で殺し、軽い着地音で済ませた。
「おいおい、どうしたんだ?」
「好きだ!」
「……は?」
アーサーは頬を染め、ふいと顔をそらした。
「誰が?誰を?」
「俺が、……お前を」
「……」
驚きで、ギルベルトは何も言えなかった。前例がいるので偏見も差別もする気はない。むしろ、友人だと思ってたやつに告白されてどうしようといった心境だった。
返事が返ってこないことを気にしてか、アーサーは言った。
「ギルベルトは、俺のこと嫌いか?」
「嫌いじゃねぇよ」
つか、嫌いなはずねぇだろ。
嫌う要素自体どこにも存在していなかった。
しかしじゃあ好きか、と問われれば、ギルベルトは悩んだ。確かに友人以上の感情は持っていると思うが、果たしてそれが恋愛感情に発展するかと言われると答えに困った。
「でも、お前が求めるような感情は持ってねぇと、思う」
それをどう捉えたのか、アーサーは急に表情を明るくした。
「じゃあ、可能性はあるわけだな」
「え?いや、あー」
アーサーの言っていることは間違ってはいない。間違ってはいないが、どこかずれているのは確かだ。
「絶対振り向かせてやるからな!」
「……」
そう言い残し、軽い足取りで帰っていくアーサーの背を見ながら、ギルベルトはもはや返す言葉が見つからなかった。