振り向かせてやる!
そのことは、瞬く間に学校中に広まった。
「おいおい、ギルベルト。お前そんなにアーサーと仲良かったのか?」
「ほんま信じられへんわ」
「別に仲良かろうがお前らには関係ねーだろ。つーか紹介してきたのお前らじゃねーか」
業後、幼馴染二人は門に向かおうとするギルベルトを見つけるなり両サイドを固めた。
「いや、あいつのA○フィールドはほんま広いし頑丈なんやって」
「こんな短期間で攻略するとはねぇ」
左右でギルベルトの腕をホールドしながら、フランシスとアントーニョはお互い頷きあった。
「A○フィールドって、それこそ関係ねーだろ」
「要は俺らは、お前のことだから、エリザベータが本命だと思ってたってこと」
「エリザは悪友だって…ってか、本命とか表現おかしくねーか、おい」
これではアーサーが本命という文脈になるではないかと、ギルベルトはフランシスを睨んだ。
「いやいや、おかしくないって。俺はロヴィーノが本命やからな!」
「お前のこたぁ聞いてねぇよ!」
アントーニョが二年下のロヴィーノに執心なのは周知の事実なので誰も何も言わない。たとえそれが男同士であったとしても。
「そもそも、俺はアーサーと出かけるだけだぞ?お前らと出かけるみたいに」
「そう思ってるのはお前だけかもしれないぞ?」
「は?」
ギルベルトは足を止め、少し先へと進んだ二人を見た。
「…お前ら、なんか楽しんでねーか?」
「「そりゃあもう」」
その清々しい返事に、ギルベルトは頬を引き攣らせた。
「帰る!」
話が通じないのに付き合ってられるか!ギルベルトは二人の間を抜け、速足で門を抜けようとした。
しかし、その足は門の手前5メートルで止まった。
「よぉ」
そこには門を背にしてアーサーが立っていた。
ひゅう、とフランシスが口笛を吹いた。
「お迎えとは健気だねぇ」
「うっせぇよ!」
やはりアーサーはフランシスに対する罵声を忘れなかった。会えば会ったで野次の飛ばしあい。これこそがアーサーの親友に対する態度なのだろうとギルベルトは思った。
――― じゃあ、俺は何なんだ?
フランシスの言葉のせいで、やけに気になってしまった。
「って、野次飛ばしに来たんじゃねぇよ俺は」
熱くなりいつの間にか三人の輪に入っていたアーサーは、くるりとギルベルトの方に向いた。
「今から帰るのか?」
その声音は明らかにフランシスとの掛け合いとは違う、どこか遠慮したものだった。
「おう、そいつらが鬱陶しいんでな」
「そうか、なら」
「じゃ、また明日な」
何かと気を遣わせては大変だろう。そう思っての行動だった。その続きを聞く前に、ギルベルトは歩きだし、門をくぐって学校を出た。
「え…?」
「…行っちまったな」
「…行ってしもた」
これにはフランシスもアントーニョも驚いた。
「…俺、何かしたのか?」
驚いた表情のまま、アーサーは二人の方に振り返った。
「案外、お前の一方通行じゃないかもしれないぞ」
「なっ?!………お前ら、なんか楽しんでないか?」
アーサーのその言葉に、二人は顔を見合わせ、笑った。
「な、何だよ!」
「いや、お前ら似た者同士なあって」
「絶対お似合いやと思うで」
「?!?!」
その言葉に、アーサーは顔を真っ赤にした。