乞えど悔やめど
……あ、きっと見捨てられた。ひとごとのように、ふとそういう考えが巡った。勘のよいそのひとが、自分の異体にきづかないわけがない。なでることもだきしめることも、そのひとはしてはくれなかった。そうだ、見捨てられてしまったのだ。そうに違いない。まるですべてを喪失したような気分になった。喉からこぼれた嗚咽を、もう隠すことさえできない。しまった。ようやく目を覚ましても、もはや遅い。ギルベルトにだけ捧げるはずであった貞操は、そのひとに空似した男たちにすべて投げ売ってしまった。乞えど悔やめど、もう明白に手遅れだった。