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スターゲイザー/タウバーンのない世界

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きょうそうしない?






この島で入学式の季節に桜は咲かない。
潮風に感じる春だけがその印だ。
タクトは今日高校生になる。

「ターっくん!」

その声に振り向くと、ワコが手を振って駆けてくる。
「そんなに走るとパンツ見えるよぉ。」
タクトがさらっと笑うと、数名の男子生徒が振り返った。
ワコはハッとお尻を抑える。
制服ができた時待ちきれず見せ合ったから、これで二度目だ。
短めなスカートもワコによく似合っている。
ちょっとムクれて見せて、幼なじみが隣に並んだ。
「タッくん、ネクタイ歪んでるよ。」
「えぇ。」
立ち止まってそれを見てみる。たしかにちょっと歪んでるけど、どうせ自分じゃうまくいかない。
「ちょっとかして。」
手慣れた手つきでネクタイを直す。
男手のない家で何故こんな技術を習得しているのだろうと、タクトは不思議に思いながら。

「あ。」
二人を追い越す沢山の生徒の中に、見覚えのある青い頭を見つけた。
「スガタ!」
ポケットに手をつっこんで、すでに1メートル以上先にいるスガタが立ち止まり振り向いた。
「スガタくんおはよー。」
「おはよ。」
とワコに微笑。
「ちょっとぉ〜何無視してんの?」
タクトが隣に並ぶと、興味なさそうな視線を一瞬やって。
「別に、一緒に登校する必要ある?」
と冷ややか。
幼なじみのクールすぎる態度に、口を開けて絶句するタクト。

「ワコ〜!」
「はいはい、スガタくんもタッくんをいじめないの。」
ワコを挟んでスガタとタクトが歩く。
追い抜いてゆく生徒たちは知っている顔もあり、知らない顔がほとんど。
しかし後ろへ見送るたびに、やけに背後がざわめき出す。
ワコは敏感にスガタが不機嫌になるのを感じながら、苦笑いを浮かべることしかできない。

「だから嫌なんだよ。」
スガタが低い声で不満をこぼした。
「何が?」
とタクトがとぼけた声を出したので。
「お前と並んで歩くのがだよ!」
スガタの不機嫌はマックスだ。
「僕一人ならこんなに目立たないのに。タクトはもうちょっと気配を消すとかできないのか?」
「け、気配を消す??!忍者でもアルマーニ!」
「アルマーニ!?」
ワコは瞬時につっこみを入れるが、スガタは拾いもしない。
「僕はできる。」
「うそ!じゃやってみてよ。」
「さっきから最大限に目立たないように振る舞ってるよ!現にお前と並ぶまでまったく気にされてなかった。」

二人の言い争いを眺めながら、こういう姿が増々目立ってしまうのになあ、なんてワコは思った。
まあ黙っていても二人並ぶと目立ってしまうのだが。
二人の威力が大きいだけで、実は単体でも充分注目されていることに、今やスガタは気付きもしない。
自分の頭一つ分高い二人は、わーわー何か言い合いながら、器用に人をよけて歩く。
タクトもスガタも単体でいると「あの人ちょっとカッコいいかも。」くらいのハンサムなのに、二人集まると相乗効果でイケメン具合が増すらしい。
しかも毎日こんな感じなので、「やだイケメンがじゃれてる!!!」とエンタテイメントを提供している。
ワコはこれを「イケメン二乗の法則」と呼んでいる。

そうして一通り注目を集めると、校門が見えた。
「あ、二人とも!学校につくよ!」
ワコが言うとタクトはぱっと顔を上げた。
「ほんとだ!」
タクトは目を輝かせて立ち止まった。
今日から高校生活が始まる。
人生で輝く想い出の日々になるだろう。
残りの十代ほとんどを過ごすステージだ。

「ねえ、下駄箱まで競争しない?」
「ガキっぽいから嫌だ。」
「パンツ見えちゃうよ。」
タクトはムスと頬を膨らましてみせたが、二人は無視して先を歩く。

「負けた人は羞恥刑。」
その言葉にピンとくる。
幼なじみだけに、他に明かされたくない秘密を握り合っているのだ。
「ハンデね!ハンデ!」
ワコはそう言って合図も待たずに走り出した。
数名の生徒が不思議そうにワコを見る。

校門のレールの上にスガタとタクト。
「お前ふざけんなよ。」
苛立ちながらスガタは腕組みして、その顔に怒りの笑みを浮かべる。
「入学式恒例ですよ。」
肩を伸ばしながらタクトはニヤリとスガタに微笑む。
ワコが半分まで走った所で、タイミング良く予鈴が鳴った。
同時に、タクトとスガタは走り出した。
一番生徒が多い時間帯だというのに、それをよけて二人は全力疾走する。
新しい制服もおかまい無し、ブレザーの前ははだけてネクタイが揺れた。

「スガタ!負けたら何がいい?やっぱり一ヶ月タッくんの刑かな?」
「とりあえずタクトはポエム朗読の刑だ!」
「わ!もう追いついて来た!」
下駄箱につく頃には三人で爆笑だった。

ちなみに負けたのはタクトで、自己紹介の際に小学生の時作った「僕は銀河美少年」というタイトルのポエムを暗唱させられた。
このパフォーマンスも加わり、タクトとスガタとプラスαワコは、クラスメイトにあっという間に記憶された。
そして下校時にスガタは思い知るのだが、
今朝の登校ダッシュのおかげで、新入生からも在校生からも、その存在をなんか騒がしい奴らと注目されることになってしまった。

「静かな高校生活が送りたいのに・・・・。」
「スガタが目立たないなんて無理でしょ。」
あは。と笑うタクトが心底腹立つ。
その頬をつねって憂さ晴らしをするスガタ。
まぁまぁ。なんていいながら、自分を庇ってくれるワコ。
二人は何も変わらないなあ〜と思いながら、タクトは新しい生活に期待を膨らませた。

高校生活もきっと、楽しくなるよね。
麗らかな春の日差しは、タクトに「オッケーオーライ!」と言ってるようだった。