Where are my cookies?
これは暖かな昼下がりに起きたちょっとした騒動のお話。
ぽかぽかと暖かくてついうっかりメタナイト卿も椅子の上でいねむりをしています。そのせいでこっそりはいってくる誰かの影に気がつかなかったのでした。
メタナイト卿が起きたのはそれからしばらく経って、忠実で誠実なふたりの部下が帰ってきた時でした。
「ご主人、こんなところで寝ていると風邪をひいてしまいますよ」
ブレイドが声をかけます。その声でメタナイト卿は目を覚ましました。そして起こしてくれたお礼の言葉を口にした後言いました。
「先ほど、フームがクッキーを持ってきてくれたのだ。もうすぐ三時だ、三人で食べようか」
主人の提案にふたりは顔を見合せます。だって……。
「そんなものどこにもありませんよ」
ソードが口を開きます。
「そんなばかな、そこに置いていたはずなんだが」
慌ててメタナイト卿は椅子から降りると置いたはずの場所に向かいます。けれど確かに置いてあった場所にはクッキーどころかお皿までないのです。
あんなにたくさんあったクッキーは一体どこに消えたのでしょう。
メタナイト卿はしばらく何かを考えているようでしたがそのまま部屋の外へ出て行きました。二人の部下はあとは追わずお茶の準備を始めました。
なぜかって?それはもちろん、もう事件の真相を三人は気付いてしまったのです。
だからなんの心配もいらないわけです。いいえ、心配事が一つだけ。
「お茶菓子、酢昆布でいいか?」
「……」
素敵なクッキーを食べそこなった残念なおなか。
さてメタナイト卿です。彼は誰かを探しているようでした。そのとき、
「メタナイト卿!」
名を呼ばれ立ち止まります。
「あぁ、フーム」
「クッキーはもう召し上がったかしら? 自信作なのだけれど」
そう聞かれ、目線をついそらしてしまいます。せっかくくれたクッキーをなくしてしまった、なんてひどい話でしょう!
フームは様子がおかしいメタナイト卿に気がつきましたが、その時
「ねーちゃん、ちょっといい?」
というブンの声が聞こえました。なので気になりながらも別れの言葉を口にして立ち去りました。
仮面の下でほっと息をつきまたメタナイト卿は歩き出しました。そんなメタナイト卿の姿を物陰からじっと見ている姿がありました。
「おい、メタナイトの奴、様子がおかしいぞい」
「はい、これはきっと何か企んでるに違いないでげす」
デデデとエスカルゴンのふたりです。メタナイト卿がいつも彼らの邪魔をするものですから、ふたりは何とかして彼の弱みを握ろうとしているのでした。
「やい、メタナイト! 一体貴様なにを企んでいるぞい」
「何かを探すようにうろうろと、は、まさかへそくりでも探す気でげすか? ここからすぐの曲がり角、下から三つ目のブロックになんか隠してないでげすよ!」
「……」
黙りこくったメタナイト卿とは反対に、がなりたてるように騒いでいるふたりの声に一度引っ込んだフームが顔を出しました。
「一体何の騒ぎなの?」
「反逆罪の取り調べぞい!」
デデデがメタナイト卿を指差しますが、相変わらずメタナイト卿は気にも留めていません。
「その、ふてぶてしい態度、改めるべきでげすよ」
エスカルゴンが詰め寄ります。
「一体彼が何をしたっていうのよ!」
エスカルゴンとメタナイト卿の間にフームが割って入りました。
「それをこれから調べるんでげす」
エスカルゴンが勢いよく言います。どうやらふたりのほうから引く気はないようで、内心メタナイト卿は困り果てていました。
「あ」
とメタナイト卿は声をもらしました。その視線の先、すぐそこの曲がり角のところです、にはカービィがいました。
「……エスカルゴン殿、あの角の下から三つ目のブロックにはへそくりは隠されてないんでしたよね」
「そ、そうでげすよ。へ、へそくりなんか隠してるわけ、な、ないでげすよ」
「さっき、エスカルゴンはそう言っていたぞい。今その話が何の関係がある、メタナイト」
ひきつった笑みを見せるエスカルゴンに気づかれぬようにそっとフームに目配せをしました。頷いてフームは叫んだのです。
「カービィ、吸い込みよ!」
フームの言葉に反応して吸い込みを開始します。ブロックの一つが吸い込まれ外れたかと思うと、
「ぎゃ!」
エスカルゴンが悲鳴をあげました。ぽっかりとできた穴から小箱が引き出されて、そのまま口の中へ消えてしまったのです。
「わ、わたしのへそくりがぁ」
「おい、エスカルゴン、さっき貴様はあそこにへそくりはないといってなかったかぞい?」
「ギク、そ、それはそのぉ……」
「エースカールゴーン」
ふたりが攻防を繰り広げている間に、フームとメタナイト卿はカービィを連れてこっそりとその場から立ち去りました。
「あの二人が間抜けでよかったわ。でも一体どうしたのよ? さっきからあなた少し変よ」
フームがメタナイト卿に尋ねました。
「実はそなたに謝らなくてならないことがある」
「なぁに?」
メタナイト卿はカービィに口を開けさせ先ほどの小箱と一緒に一枚のお皿を取り出しました。
「これ、今日わたしがクッキーをあげたときに貸した皿じゃない、一体どうして……。
もしかしてカービィが全部食べちゃったの?」
小箱と一緒に渡された皿とカービィとメタナイトを見比べながらフームは言いました。メタナイト卿は頷き、事の顛末を話すことにしたのです。
「すまなかったな、黙っていて」
「もういいわ、すんだことだもの。でもどうしてすぐに言わなかったの?」
フームが首をかしげます。最初から言えばこんな騒ぎにはならなかったはずなのに。
その疑問に、眠くなったのでしょう、うとうとしているカービィに視線を向けてから答えました。
「それは、もしカービィにいたずらされたことがばれたら、私がたるんでる、と陛下に付け入られてしまうだろう。彼は私が邪魔だろうから追い出されてしまうかもしれない。それは避けたかったからな」
「まぁ、あなたほどの人がまだこのお城にいたいと思うの? あなたたちなら城を追い出されても野宿とかなれていそうだし、かえって自由の身になれるのではなくて?」
もう、デデデの監視も必要ないでしょう? とくすくす笑っています。
「もう少し、いやこの国にいる間はこの城にとどまっていたかったんだ」
「なにかいった?」
独り言のような小さな声が耳に入り聞き返しました。
「あ、いや……そうだせっかくクッキーをもらったのに感想を言えずにすまなかったな」
「しかたないわよ、カービィが相手だもの……。そうだ! 明日のお昼いらっしゃい。今度はケーキを作るの。一緒に食べれば盗み食いの心配ないでしょう?」
「ああ、楽しみにしているよ」
ぽかぽかと暖かくてついうっかりメタナイト卿も椅子の上でいねむりをしています。そのせいでこっそりはいってくる誰かの影に気がつかなかったのでした。
メタナイト卿が起きたのはそれからしばらく経って、忠実で誠実なふたりの部下が帰ってきた時でした。
「ご主人、こんなところで寝ていると風邪をひいてしまいますよ」
ブレイドが声をかけます。その声でメタナイト卿は目を覚ましました。そして起こしてくれたお礼の言葉を口にした後言いました。
「先ほど、フームがクッキーを持ってきてくれたのだ。もうすぐ三時だ、三人で食べようか」
主人の提案にふたりは顔を見合せます。だって……。
「そんなものどこにもありませんよ」
ソードが口を開きます。
「そんなばかな、そこに置いていたはずなんだが」
慌ててメタナイト卿は椅子から降りると置いたはずの場所に向かいます。けれど確かに置いてあった場所にはクッキーどころかお皿までないのです。
あんなにたくさんあったクッキーは一体どこに消えたのでしょう。
メタナイト卿はしばらく何かを考えているようでしたがそのまま部屋の外へ出て行きました。二人の部下はあとは追わずお茶の準備を始めました。
なぜかって?それはもちろん、もう事件の真相を三人は気付いてしまったのです。
だからなんの心配もいらないわけです。いいえ、心配事が一つだけ。
「お茶菓子、酢昆布でいいか?」
「……」
素敵なクッキーを食べそこなった残念なおなか。
さてメタナイト卿です。彼は誰かを探しているようでした。そのとき、
「メタナイト卿!」
名を呼ばれ立ち止まります。
「あぁ、フーム」
「クッキーはもう召し上がったかしら? 自信作なのだけれど」
そう聞かれ、目線をついそらしてしまいます。せっかくくれたクッキーをなくしてしまった、なんてひどい話でしょう!
フームは様子がおかしいメタナイト卿に気がつきましたが、その時
「ねーちゃん、ちょっといい?」
というブンの声が聞こえました。なので気になりながらも別れの言葉を口にして立ち去りました。
仮面の下でほっと息をつきまたメタナイト卿は歩き出しました。そんなメタナイト卿の姿を物陰からじっと見ている姿がありました。
「おい、メタナイトの奴、様子がおかしいぞい」
「はい、これはきっと何か企んでるに違いないでげす」
デデデとエスカルゴンのふたりです。メタナイト卿がいつも彼らの邪魔をするものですから、ふたりは何とかして彼の弱みを握ろうとしているのでした。
「やい、メタナイト! 一体貴様なにを企んでいるぞい」
「何かを探すようにうろうろと、は、まさかへそくりでも探す気でげすか? ここからすぐの曲がり角、下から三つ目のブロックになんか隠してないでげすよ!」
「……」
黙りこくったメタナイト卿とは反対に、がなりたてるように騒いでいるふたりの声に一度引っ込んだフームが顔を出しました。
「一体何の騒ぎなの?」
「反逆罪の取り調べぞい!」
デデデがメタナイト卿を指差しますが、相変わらずメタナイト卿は気にも留めていません。
「その、ふてぶてしい態度、改めるべきでげすよ」
エスカルゴンが詰め寄ります。
「一体彼が何をしたっていうのよ!」
エスカルゴンとメタナイト卿の間にフームが割って入りました。
「それをこれから調べるんでげす」
エスカルゴンが勢いよく言います。どうやらふたりのほうから引く気はないようで、内心メタナイト卿は困り果てていました。
「あ」
とメタナイト卿は声をもらしました。その視線の先、すぐそこの曲がり角のところです、にはカービィがいました。
「……エスカルゴン殿、あの角の下から三つ目のブロックにはへそくりは隠されてないんでしたよね」
「そ、そうでげすよ。へ、へそくりなんか隠してるわけ、な、ないでげすよ」
「さっき、エスカルゴンはそう言っていたぞい。今その話が何の関係がある、メタナイト」
ひきつった笑みを見せるエスカルゴンに気づかれぬようにそっとフームに目配せをしました。頷いてフームは叫んだのです。
「カービィ、吸い込みよ!」
フームの言葉に反応して吸い込みを開始します。ブロックの一つが吸い込まれ外れたかと思うと、
「ぎゃ!」
エスカルゴンが悲鳴をあげました。ぽっかりとできた穴から小箱が引き出されて、そのまま口の中へ消えてしまったのです。
「わ、わたしのへそくりがぁ」
「おい、エスカルゴン、さっき貴様はあそこにへそくりはないといってなかったかぞい?」
「ギク、そ、それはそのぉ……」
「エースカールゴーン」
ふたりが攻防を繰り広げている間に、フームとメタナイト卿はカービィを連れてこっそりとその場から立ち去りました。
「あの二人が間抜けでよかったわ。でも一体どうしたのよ? さっきからあなた少し変よ」
フームがメタナイト卿に尋ねました。
「実はそなたに謝らなくてならないことがある」
「なぁに?」
メタナイト卿はカービィに口を開けさせ先ほどの小箱と一緒に一枚のお皿を取り出しました。
「これ、今日わたしがクッキーをあげたときに貸した皿じゃない、一体どうして……。
もしかしてカービィが全部食べちゃったの?」
小箱と一緒に渡された皿とカービィとメタナイトを見比べながらフームは言いました。メタナイト卿は頷き、事の顛末を話すことにしたのです。
「すまなかったな、黙っていて」
「もういいわ、すんだことだもの。でもどうしてすぐに言わなかったの?」
フームが首をかしげます。最初から言えばこんな騒ぎにはならなかったはずなのに。
その疑問に、眠くなったのでしょう、うとうとしているカービィに視線を向けてから答えました。
「それは、もしカービィにいたずらされたことがばれたら、私がたるんでる、と陛下に付け入られてしまうだろう。彼は私が邪魔だろうから追い出されてしまうかもしれない。それは避けたかったからな」
「まぁ、あなたほどの人がまだこのお城にいたいと思うの? あなたたちなら城を追い出されても野宿とかなれていそうだし、かえって自由の身になれるのではなくて?」
もう、デデデの監視も必要ないでしょう? とくすくす笑っています。
「もう少し、いやこの国にいる間はこの城にとどまっていたかったんだ」
「なにかいった?」
独り言のような小さな声が耳に入り聞き返しました。
「あ、いや……そうだせっかくクッキーをもらったのに感想を言えずにすまなかったな」
「しかたないわよ、カービィが相手だもの……。そうだ! 明日のお昼いらっしゃい。今度はケーキを作るの。一緒に食べれば盗み食いの心配ないでしょう?」
「ああ、楽しみにしているよ」
作品名:Where are my cookies? 作家名:まなみ