家庭教師情報屋折原臨也6-2
静雄と臨也は三年二組の前に戻ってきた。道中フリーマーケットや実験ショーなどの軽い出し物を何件か見て回り、ここへと着いた。もうすぐ静雄は仕事の時間だった。
「じゃ、静雄君。仕事がんばってね」
「……なぁ」
そう言って臨也は帰ろうとしたが、静雄に止められた。
「お願いって、何だよ?」
そう静雄が切りだすと、臨也は忘れていたのか、「あぁ」といった。しかしお願いの内容自体は覚えていたようで、静雄に振り返って言った。
「今度から『臨也』って呼んで。敬称もいらないから。これがお願い。変じゃないだろう?」
「……臨也」
静雄はそのままおうむ返しのように名前を言った。すると臨也は満足したのか目を細めた。
「明日の午後にまた」
「あぁ」
臨也は軽く手を振り、今度は振り返ることなくそのまま背を向けて歩いて行った。
その背が角を曲がり見えなくなるまで静雄はその場に立ち続け、そして小さく呟いた。
「いざや……」
作品名:家庭教師情報屋折原臨也6-2 作家名:獅子エリ