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家庭教師情報屋折原臨也6-2

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間隙なく答えが返ってきて、学生は顔を上げた。臨也は余裕の表情で言った。

「次の問題は?」
「あ、はい」

驚いた様子のまま、生徒はぱらぱらとノートを捲った。

「第二問、カントの生まれた町のドイツ名は?」
「ケーニヒスベルク」
「第三問、シェイクスピアの四大悲劇のタイトルは?」
「マクベス、リア王、オセロ、ハムレット」
「第四問、天使の階級の一番上は何と言う?」
「セラフィム、熾天使のほうがいいかな?」
「いえ、大丈夫です」

チェックを入れながら、さっと生徒はノートを捲る。

「第五問、マイムマイムはどこの民謡?」
「イスラエル」

詰まることなく解答する臨也に、静雄は驚きを隠せなかった。確かに「頭がいい」とは思っていたが、それは少し違ったようだった。先ほどの学生同様、この手の問題は学校の勉強とは違うのだろう。
六問目も難なく答えた。次いで生徒は足元から伏せられたフリップを拾い、机に立てた。

「第七問、これは何て読む?」

フリップには大きく毛筆で「忝い」と書いてあった。直筆のようで、なかなかに達筆だった。

「かたじけない」

それも読み解き、フリップは机に倒された。生徒はノートに視線を戻し、次の問題を探した。

「第八問、三面六臂と同義の四字熟語は?」
「八面六臂」
「第九問、ワシントン条約の正式名称は?」
「絶滅の恐れのある野生動物の種の国際取引に関する条約」

最後の一問のところで、出題役の生徒はページを最後まで捲った。

「第十問、悪魔の階級を作ったとされている人は?」
「あー、……誰だっけ?」

臨也は生徒から見てごく自然に、静雄から見てわざとらしく唸った。恐らく生徒の気持ちを汲んだのだろうが、ぽんと手を叩いた。

「あぁそうだ。セバスチャン・ミカエリス」

偽善的笑みを浮かべ、臨也は言い放った。

「し、信じられない……」

出題役の生徒が驚愕の表情で呟いた。そして臨也は震える手で渡された成績表を受け取り、静雄にも見せた。問題数分の正答数の形で示された成績表はすべて約分して一にできた。

「……最後わざとだろ」
「あれ?ばれてた?せっかくだったから彼の気持ちを汲んだつもりだったんだけど」
「答えた時点で汲んでないだろ」

再度受付に戻り、成績表を出した。文句なしの一位は明らかだった。しかし一位を取ったからといって何か商品があるわけでもなく、黒板に名前が書かれるくらいだった。
 参加記念の飴をもらい、静雄と臨也は教室を出た。

「イザ兄どうだった~?」

すると待ちわびていたかのように舞流と九瑠璃が声をかけてきた。臨也は教室の黒板を指した。もちろんそこには記録を塗り替えた臨也と静雄の名前が書かれていた。

「うわ、全問正解本当にやっちゃった!最終コーナーで絶対つっかえると思ってたのに」
「……否……可……(でも兄さんならできるかも)」

舞流はその一言に納得したようで、深く頷いた。

「まぁ面白かったよ、高校生の作った問題にしては」
「じゃ、宣伝頑張れよ」

静雄は二人の頭を軽くぽんとたたいて、先を行く臨也の後を追った。