真昼の夢
誰にも甘えず、限界までまるで平気な顔をする男が、倒れる――その時にいるのが自分の前だということに、どうしようもない甘さを感じてしまう。相手にそんな意識は毛頭ないのだとわかっていはいても、無意識だからこそ。
だから仕方がない。湧きあがる衝動が抑えられないのも、矛盾だらけの行動も――全部、一時の夢だ。
(―――起きるなよ、)
念じながら、そっと額にかかる黒髪に触れた。
指通りのいい黒髪がするりと指先を抜けていく。何度かぎこちなく触れると丸みを帯びた額が露わになる。
じっと上下する背中を見つめ、―――起きるな、ともう一度強く胸の内で唱えながら、露わになったそこに唇を寄せた。