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Stand by me

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 寝転んで、テレビの音をBGMにしながらくだらない話をするのは、どういうわけか中学生のころからずっと変わっていない。随分いろいろと互いに変わってしまったけれど、それは時が流れるのだから当然なのだけれど、こればかりは変わらないのだ。なぜなのかは考えてもわからず、それだから、ある日ふいに終わってしまうかもしれないけれど、少なくとも今は続いている。
 思えば、20歳の死にそうだったあのころも、こうして二人で寝転んでいた。なんてことをうっかりユウジあたりに話してしまえば、「なんや結局恋のからさわぎかい」くらいのことは言われるのだろうが、そういうことではない。かと言って義務でもない。
 けれど、あのとき、あの電話で、答えを出せたのは――この時間があったからだろうと、最近、財前はそう思うのだ。ひとつでも変わらないものがあって、しかもそれが輝いていれば、どれだけ変わってしまおうともおそろしくはない。暗闇の森に放り込まれ、やがて自分の姿かたちすら闇に溶けてしまったとしても、ひとつだけ、たったひとつだけでも、何か握り締めているものさえあれば、己の姿も思い出せよう。
 中学、高校のときは、大体学校の帰りにコンビニとレンタルビデオ屋に寄り、スナック菓子とDVDを手に財前の部屋で夜を明かしたものだ。『スタンドバイミー』や、『俺たちに明日はない』、『レザボアドッグス』、『ファイトクラブ』……そんな映画を惜しげもなくBGMにして、いつだってしていたのは後々思い出せないようなくだらない話だし、話題が無くなれば沈黙していることだってあったのだけれど、どうしてこうも輝いているのか。
 やがて集まるのは謙也のアパートになった。財前も一人暮らしをはじめたから、交互に行き来するようになった。今は一緒に住んでいる。旅もする。駄菓子は煙草と酒になった。『スタンドバイミー』はもう15回は見た。
(俺の前におるあんたの、そのまんまが好き……)
 あの日の答えを反芻する。そうだ。酒が養命酒になっても。『スタンドバイミー』の台詞を、すっかり覚えてしまっても。
「なあ、光」
「何」
「……電気、消そか」
 付けっぱなしのテレビからあの歌が聞こえている。夜の闇がやってきても、明かりが月だけとなっても、おそろしくはない。スタンド・バイ・ミー、冷たい手が触れ合う。
 あの夜の返事はまだ返ってきていない。それでも構わない。隣にいることが、すべての答えなのだ。
作品名:Stand by me 作家名:ちよ子