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懐かしさはくちびるに溶けて ルートリッヒ

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ドイツがドイツ連邦と呼ばれていた頃、リヒテンはまだ幼く、保護者はオーストリアだった。
プロイセンとドイツも一緒に暮らしていた。
オーストリアは当時、連邦議会議長国だったので、忙しくてリヒテンに構ってあげられなかった。

周りは皆大人ばかりだったので、リヒテンはいつも一人寂しそうだった。
なので、よくドイツとプロイセンはリヒテンの遊び相手をしたり、リヒテンの身の回りの世話をしていた。


―あの頃のリヒテンは、まだ髪が長かったな…。
ドイツは眠っているリヒテンの髪を手で軽く梳いていた。
ドイツは昔の記憶を呼び起こしていた。


ドイツ連邦時代、リヒテンの髪の長さは肩を少し超えるくらいまであった。
この当時のリヒテンは一人で髪を結う事が出来なかったので、ドイツとプロイセンが毎日、リヒテンの髪を結っていた。
それ以前は、ハンガリーにやってもらっていたのだとか。
初めの頃は二人とも不器用だったので、よくメイドに苦笑されながら直してもらっていた。
しかし、二人は徐々に慣れてきて、メイドに苦笑される事も無くなり、リヒテンに教える事が出来るまでに上達した。

その後、色々な別れと出会いを繰り返した。
妹のように思っていたリヒテンとは、今では恋人という関係だ。
あの頃の自分からは全く想像が出来なかった。


「ドイツさん…」
リヒテンの口から、愛する人の名が紡がれた。
「リヒテン、起きたのか?」
ドイツの思考が過去から現在へと引き戻された。
「…愛しています……」
リヒテンの口から滅多に聞かされる事の無い言葉が紡がれた。
しかも、リヒテンの穏やかな微笑みと共に。
「!!」
ドイツは思わず顔を真っ赤にし、固まってしまった。


「おーーい、ヴェスト!!風呂が空いたからキリがいいところで…。
 って、何やってんだよ?」
風呂上がりのプロイセンがドイツを呼びにリビングへとやって来た。
そこでプロイセンが見た光景は、何故か耳まで真っ赤で固まったままのドイツとその隣でスヤスヤと眠っているリヒテンだった。
「……お、俺は、まだ仕事が、あるから!!」
ドイツはその場から逃げだすように、リビングを飛び出し、書斎へと駆け込んでいった。
―…?何焦ってんだ、ケセセ…。
プロイセンはあまりのドイツの動揺っぷりに少々驚いた。
そして、リヒテンの穏やかな寝顔を見て、全てを悟ったプロイセンは思わずニヨニヨとしてしまった。
「…ったく、ヴェストの奴。愛しのリヒちゃんを置いてけぼりにしちゃって…。よっこらせっと」
プロイセンはリヒテンを静に抱き上げると、そのままリヒテンが使っている客室へと運び込んだ。
そして、ベッドにリヒテンを寝かせた。
「リヒちゃん、Gutte Nacht!(ドイツ語で「おやすみ」)いい夢見ろよ!」
プロイセンは去り際にリヒテンの額に軽くお休みのキスをして、自分の部屋へと戻っていった。