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懐かしさはくちびるに溶けて ルートリッヒ

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翌朝。
リヒテンが目を覚ますと、自分が使っている客室のベッドの上だった。
―確か、リビングの暖炉の前で眠っていたのではなかったかしら…?
 ドイツさんか、プロイセンさんかがここまで運んでくださったのでしょうね。
 後でお礼を言わなくては・・・・。
リヒテンはベッドを出て、服を着替えた。
そして、ダイニングキッチンへと向かった。

ダイニングキッチンには既にプロイセンがいた。
「お早うございます、プロイセンさん」
「おはよ、リヒちゃん」
プロイセンはマグカップ片手に、新聞を読んでいた。
「今、朝食をご用意しますね」
リヒテンは自前のエプロンを身につけて、朝食を作り始めた。
「おう」
プロイセンはテーブルの椅子に座った。

「そういえば、昨夜、私をベッドまで運んでくださったのはプロイセンさんでしょうか?」
リヒテンは朝食を作りながら、プロイセンに尋ねてきた。
「おう、俺様だ。
 リヒちゃんは軽かったから、全然平気だったぞ!」
プロイセンはいつものケセセという笑い声で上げて、言った。
「あ、ありがとうございます」
リヒテンは恥ずかしそうにプロイセンにお礼を言った。
「そういえば、ヴェストをいたぞ。
 ヴェストの奴、リヒちゃんの寝顔を“じぃーっと”眺めてただけだけどな。
 ほっぺをプニプニしたりして、イタズラしてたみてぇだけどよぉ」
プロイセンはニヨっと笑いながら、リヒテンに言った。
「兄さん、リヒテン、お早う。
 ?…リヒテン、どうかしたのか?」
タイミング良く(或いは、悪く)、ドイツがダイニングキッチンへとやって来た。
「………ドイツさんの、ドイツさんのバカ!!もう知りません!!!」
リヒテンは顔を真っ赤にして、バタバタと騒々しい足音を立てて、客室へと閉じ籠もってしまった。
「?!!兄さん!リヒテンに何を言ったんだ!!」
驚いたドイツは、プロイセンに詰め寄った。
「べっつにー。俺は昨日、リヒちゃんをベッドまで運んでやった事を話しただけだぞ。
 ヴェストは、リヒちゃんの可愛い寝顔を眺めてるだけだったけどなーって」
プロイセンは悪びれる様子もなく言った。
「に・い・さ・ん~~~!!」
ドイツの怒りは頂点に達しようとしていた。
「そ、それより、リヒちゃんの誤解を解くほうが先じゃねえか?」
プロイセンは自分の身の危険を感じ取り、ドイツの怒りの矛先を変えようとした。
「はっ!そうだった!!リヒテン、兄さんが言った事は誤解だ!!俺の話を……」
ドイツはリヒテンの誤解を解くために、リヒテンが閉じ籠もっている客室へと向かった。
「やれやれ…。まっ、アイツらをからかうのは面白いんだけどよぉ…」
プロイセンは仕方なく、リヒテンが作りかけていた朝食を作り始めた。

この日、ドイツは「一身上の都合により、休みます」と言って、仕事を休み、リヒテンの誤解を解くことに徹した。
翌日、朝一番に上司に呼び出されたドイツは、約1時間ほどお小言と愚痴が混ざった説教を受けた。


(ルートリッヒ、終わり)