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懐かしさはくちびるに溶けて 騎士と少女

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ドイツがドイツ連邦と呼ばれていた頃、リヒテンはオーストリアと共にドイツの家でドイツやプロイセン、他の諸外国と共に同居していた。
その頃のリヒテンはまだ幼く、保護者はオーストリアだった。
だが、オーストリアは連邦議会議長国という立場にあり、とても多忙だった。
そこで、比較的手の開いていたプロイセンや(外見年齢的に)年の近かったドイツが、リヒテンの世話役兼遊び相手だった。

ある年の冬のある日。
その日は雪が降り積もり、外で遊ぶ予定は急きょ中止となった。
そこで、プロイセン・ドイツ・リヒテンの三人は暖炉の前で遊ぶことにした。
その頃、あまり字の読み書きが出来ていなかったリヒテンに対し、プロイセンは自分の膝の上にリヒテンを座らせて、絵本を読み聞かせてやった。

―あの頃とは全く立場が逆ですわ。
リヒテンは昔の思い出を振り返りながら、クスリと笑った。
プロイセンはまだ眠っている。
―早く起きてくださいまし。
  昔話をいたしましょう。
リヒテンはプロイセンの頭を愛おしげに撫でながら、心の中でそっと囁いた。