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ノマカプAPH年賀詰め合わせ

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KISS ME BABY!!



大晦日。アメリカに仕事で訪れていたウクライナは、仕事が終わって携帯を開いた。
『新着メール1件、着信履歴1件』
メールを開いて読むと、こう書いてある。
『Hello,ウクライナ!仕事が終わったら俺の家に遊びに来なよ!』
着信履歴も、彼の携帯からだった。ウクライナはふふ、と幸せそうに微笑むと、彼の家に電話をかける。
「もしもし?」
受話器の向こうから、聞きなれた声が聞こえてくる。
「メール、見たよ。今からそっちに向かうから。」
ウクライナは話しながら歩き始めた。
「ウクライナ!」
彼は、声だけで彼女だとわかったようだった。楽しそうに話を続ける。
「全く、君も大変だね。こんな年末にも仕事が入ってるなんて。まあそのおかげで俺は君に会えるからいいんだけどさ!クリスマスには会えなかったから、久しぶりなんだぞ!」
明るい彼のマシンガントークを聞いていると、なんだか心が温かくなった。
「あのねアメリカくん。もうこんな遅くだし…年が明けるまでにそっちに着かないかもしれないの…」
ごめんね、と困ったように言うウクライナは、ひとり街道をひたすら歩いている。夜も遅く、バスや電車も少なかった。アメリカの家に行くには、徒歩で行くしかなかった。
「え…!?なら、迎えに行こうか!?」
心配そうに言うアメリカを、ウクライナは声で制した。
「ううん。そんなに遠い距離じゃないし。入れ違いになったら困るでしょ?だからアメリカくんはそこで待ってて。ね?」
声だけで、心配しなくていいよというウクライナの無言の念がアメリカに伝わってくる。
「…わかったよ。あーあ。一緒に年越して、新年になった瞬間に君にキスしようと思ってたのになー!」
アメリカはソファに座りながらぐっと伸びをする。本当なら隣に彼女がいたはずなのに。一人分空いたソファを見つめて、ぼふんとそこに寝そべった。
「き、きっキス…って…!」
アメリカの言葉に、ウクライナは動揺していた。目を瞑れば彼女の赤面している顔が容易に想像できる。アメリカは可笑しくなってはははと笑った。
「俺の国では、みんな新年になるとパートナーにキスをするんだよ。カウントダウンが終わって、隣にいる人と愛を確かめあうんだ。」
お国柄、というものなのだろうか。ウクライナは自国の文化にない風習だ、と少しだけ感心する。そういう人たちもいるのか…。でも、とアメリカは続けた。
「君がそばにいないんじゃ、キスもできないなー。あーあ。」
残念がるアメリカの声を聞いて、ウクライナも寂しくなった。
「そうだね。早く会いたいね。」
言いながら足を進めるが、雪で歩きにくい。仕事でヒールのある靴を履いてきたから、余計早く歩けなかった。早く彼の笑顔がみたいのに。
「…!?ウクライナも俺と早くキスしたいってこと?」
アメリカは、がたんと音を立てて寝そべっていた身体を勢いよく起こした。いつも消極的な彼女が珍しい。
「ち、ちがうよ!キスと会いたいは別でしょう!?」
もう、アメリカくんはー、とウクライナは困ったように笑った。ざくざく、と雪の音がする。もうあと5分程で、新年を迎えようとしていた。
「あと5分だね」
ぽつりと言うと、アメリカはなんだい?と聞く。部屋の時計を見ると、あと5分の意味を理解した。
「あと5分で着きそうかい?」
聞くと、ウクライナのはあ、と言う声が聞こえた。息が白く染まる。
「急いでるけど、ちょっと無理そうかな…」
残念そうな声が聞こえて、アメリカはそっか、と呟く。
「無理しなくていいよ。ホットココアでも作って待ってるからさ。」
ね、と笑うと、ウクライナも笑った。ひゅうと冷たい風が吹く。
「ココアか…甘いやつがいいな。お砂糖たっぷりの。飲んだだけで疲れが取れちゃうようなやつ。」
小さい頃に弟と妹と一緒に飲んだ、懐かしくて温かい味。よろしくね、と言うとアメリカは、えーと笑った。
「難易度高すぎじゃないかい!?インスタントのしか作れないよー」
おどけてみせるアメリカに、ウクライナはくすくすと笑う。
「あ、でもアメリカくんのはお砂糖入れちゃだめだよ?ダイエット中なんでしょ?」
冬になってまた少しぷっくりしてきたと話したアメリカのことを、ウクライナは思いだした。いつものアイスやケーキの間食をやめれば、すぐに痩せられるだろうに。
「えーーー!?ぶーぶー!ウクだけずるいんだぞ!俺も砂糖たっぷりのココア飲みたい!」
足をじたばたするアメリカの声を聞いて、ウクライナはまた笑いだす。
「そうやっていっつも食べちゃうから太るんでしょー?駄目ったらだーめ。」
「ぶー…」
街道が騒がしくなってくる。たくさんの人が外に出て新年を待っているようだった。ウクライナは大通りを避けてアメリカの家へまた足を進める。
「なんだか人がいっぱいになってきたみたい。みんなどうしたのかしら?」
不思議そうなウクライナに、アメリカは答えた。
「きっと新年を迎えるためにみんなでカウントダウンしようとしてるのさ。そろそろ始まるんじゃないかい?」
そう言われてウクライナは腕時計に目をやった。あと1分程で新年だ。
「間にあわなかったみたい…ごめんね。」
わあ、と歓声が聞こえる。60、59、58、57……、カウントダウンが始まった。
「始まったね」
「うん。」
30、29、28、27、……
「ねえアメリカくん。目、閉じてくれる?」
25、24、23…
「目?なんで…?」
「いいから、目、閉じて?」
ウクライナに言われた通りに、アメリカは目を瞑る。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0、・・・
歓声が一段と大きくなる。HAPPY NEW YEAR! が街に鳴り響いた。
「ちゅっ」
目を瞑っていたアメリカの耳に、受話器越しから口付けの音が聞こえた。
「…あけましておめでとう、アメリカくん。…………だいすき」
ウクライナの声が聞こえると、ぶつりと電話は切れてしまう。
「へ…え…い、今のって、う、ウクライナ!?」
訳のわからないまま、アメリカは混乱していた。きっとあれは、彼女の……。
何が起こったか理解すると、かあと顔が赤く染まる。不意打ちは、反則だ…。アメリカはへなへなとその場に座り込んでしまう。
「かわいすぎるよ、ウクライナ……」
ソファに座りこんで余韻に浸っていると、玄関のチャイムが鳴る音がした。
アメリカは急いで玄関に向かう。さっきのお礼と、新年のあいさつをしなければ。それからキスして、甘いホットココアを二人で一緒に飲もう。砂糖たっぷりの、飲んだだけで疲れが取れる甘いやつ。今日くらい、ダイエットはお休みだ。

扉を開けて、笑っている彼女を抱きしめた。
「HAPPY NEW YEAR!!」

                        了.