Colorful Monsoon
当然のことながら、俺のささやかな願望は家庭教師様の見事な発砲によって打ち砕かれた。
「ボケっとしてる場合じゃねーぞ、駄目ツナ。これから手術やらホルモンの治療を始め、ドンナとしての淑女レッスンも開始しねーとなんねえからな。忙しくなるぞ」
「えっ、手術って何の?ホルモン治療ってどういうことだよ。いきなり女だったって言われてただでさえ混乱してんのに矢継ぎ早に言われたってわかるかよっ。」
「ったく、しょーがねえな。お馬鹿なおめえでも分かるように、オレ様が懇切丁寧に説明してやる。よく聞いておけよ。」
毎度毎度偉そうな奴だ。喉まで文句が出かかったが、先生の一睨みによってどうにか飲み込んだ。
「まず、おめえの今の身体は不完全な状態だ。平たく言えば、外見は男、中身-この場合は内臓ってことだがーは女の状態だ。だからまずは外見と中身を一致させる為に、手術をして女にする。下は手術によって何とかするが、上はホルモン治療をして凹凸をつける。シリコンとかでも出来ねえことはないが、上も下も手術じゃ体力的にもキツイからな。ホルモン治療である程度まではでかくなるだろうよ。」
ちょ、ちょっとまて。ナチュラルに話が進んでるんだけど、俺女として生きること決定なんですか。不完全な状態のまま男として生きていく選択はないんでしょうか、先生。
「不完全なままだったら、お前は子孫を残すことが出来なくなる。ボンゴレボスになるやつがそんなこと許されるはずがねえだろうが。それに教え子が不完全ってのはオレのプライドが許さねえし、ママンも孫が見られねえってなると悲しむだろうしな。」
-あとはこっちのほうが面白そうだからな。
ニヤッと笑ったリボーンの顔から明らかな愉快犯の匂いを感じた。どんな状態でも結局リボーンのおもちゃにすぎないんだろうな。俺ってどこまで不幸体質なんだろう。
「てなわけだから、しばらくはツナは学校を休んで治療に専念させる。女になりゃ前よりも狙われやすくなるだろうからな。それまでは各自護衛が務まるよう腕を磨いておけ。治療が終わったら改めて連絡してやるから、お前ら今日はもう帰れ。」
気が動転していてすっかり忘れていたけど、そういや起きたときに何人かの人の気配を感じていたんだった。改めて部屋を見渡すと居たのは獄寺君に山本、うちのちび達、ビアンキといったいつものメンバー。このメンバーがこうもおとなしいとは。こんな変な体だったなんて自分でも気持ち悪いって思うのに他の人からすればもっと気持ち悪いんだろうな。仕方がないとはいえ、こんな形でせっかく出来た友達が離れていくのは寂しい。一人でヘコんでいたら、突然手を掴まれた。顔を上げると涙目の獄寺君のどアップがあった。慣れてきたとはいえ、流石に涙目のどアップはひいてしまう。
「十代目、ご安心ください。この獄寺隼人、治療が終わられる頃には必ずやあなたのお傍にふさわしい男になって見せます。それまで十代目は心置きなく治療に専念なさって下さい。」
気持ちは十分伝わるんだけど、いつものことながら何かが違う。突っ込めば突っ込むほどおかしくなりそうな気がするからスルーしておこう。
「そうだぜ、ツナ。俺も頑張るからさ。ツナは何にも気にせず治療受けろよ。もともと可愛いからどっちでも大丈夫だろうしさ。」
慰めてくれてるつもりなんだろうけど、やっぱり何か違うよ山本。はっきりいって、可愛いなんていわれても全然嬉しくないんだけど。中身はともかく感覚は完全に男なんだから。
自然に女になる俺を嫌悪感なく受け入れてくれるのは、嬉しいよ。けどさ、自然すぎないか2人とも。いやな感覚が脳裏を掠めたけど、考えないでおこう。きっと2人とも俺を気遣って言ってくれただけなんだ、そうに違いない。てか、そうであってくれ。
しかし、2人が帰った後、
「こりゃ、淑女教育が完成する前に婚約者を決めねえと反乱がおきそうだな。他にも大量に候補だけはいることだしな。」
というリボーンの一言によってもろくも崩れ去った。せっかく考えないようにしていたのに、どーしてくれんだよ。治療が終わった後めちゃくちゃ顔あわせにくくなったじゃないか!!
作品名:Colorful Monsoon 作家名:いっこ