世界の終焉十題・遺
「今日のお話はこれでおしまい、」
傍らの子供の髪をそっと撫でれば、「はーい」と明るい声が返ってくる。
それが嬉しく笑ってしまうと、子供は「また笑ってるー」と僕を指差して笑う。
すると、
「こーら、人に向かって指差しちゃいけないでしょ」
ぺしん、という軽い音とともに子供の頭が叩かれた。
子供が驚きを露にして顔を上げると、そこにいるのは眉目秀麗を具現化したような、そんな人。
それでも顔には酷く優しい笑みを湛えており、今は子供の髪をくしゃりと撫でている。
「うー…止めてよー!」
「駄目って言ってる事をするから悪いんでしょ、」
まるで兄弟か親子のようなやり取りに、僕は思わず噴き出した。
すると彼は僕に向き直って、そして青空のような声を溢した。
「ただいま、帝人君」
「おかえりなさい、臨也さん」
そろそろ静雄さんも帰ってきますよ、と言えば臨也さんは凄く嫌そうに眉を顰める。
「帰ってこなくてもいいのに…」なんてぶつぶつ言いながら奥へ引っ込む臨也さんを見送って、僕はお茶の用意をする。
今日は正臣も遊びに来るし、ちょっと高い茶葉を使おう。
この間青葉君が持ってきてくれたクッキーをお茶請けにして。
「帝人さん帝人さん、どっちが早く来るかなー」
「さぁ、どっちだろうね」
くすくす、くすくす。
隣にとことことやってきた少女と視線を合わせて笑い合えば、丁度玄関のチャイムが鳴り響いた。
「あ、はーい!」
チャイムにつられてやってきた数人の子供達と一緒に玄関へ向かう。
正臣さんかな、静雄さんだよ。
子供達が笑いながら予想を言い合う。
その姿を微笑ましく思いながら、僕は玄関のドアの押し開けた。
【わたしは今も元気です】
(あなたとともに、このせかいで)