二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【東方】夢幻の境界【一章(Part1)】

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 まともな食事にありつけるのはありがたいが、その後のことを考えると少々憂鬱になるが、いま霊夢が気になっているのは別のことだった。
「久しぶりって……宴会ならつい最近やったばかりじゃない。さすがのあいつらも集まらないんじゃ――」
 ないかしら、とは続かなかった。それは考えが変わったからではない。
 紫の表情に驚いてしまったからだ。
 きっと霊夢は紫のこの表情を決して忘れることはないだろう。
 目をボタンのように丸くして、顔を強張らせていたのだ。
 突然のことでどうしたらいいのか分からず、霊夢は戸惑いながらも紫に問いかけた。
「ど、どうしたのよ? 私いま変なこと言ったかしら?」
 霊夢が言葉をかけてから数瞬後、まるで突然霊夢が目の前に現れたかのように驚いてから、紫は顔を右手で覆って霊夢から目を逸らしてしまった。
 いままで見たこともない紫の姿に、霊夢は動揺を隠せずにいた。
 改めて先ほどの会話を振り返ってみたが、やはりおかしなことは何もなかったと思う。
 一体どうしたというのか。
 紫はどこかを見つめたまま動かないので、霊夢はもうとっくに冷めてしまったお茶をぐいと飲んだ。
「今日はもう帰るわ」
「え」
 急に動き出したかと思うと、紫はそう言い残してスキマの中に引っ込み、間髪おかずにスキマも閉じてしまった。
 ぽかんと口を開けたまま硬直していた霊夢は、スキマが完全に消えてからしばらくしてようやく正気に戻り、残っていたお茶を飲み干してこう呟いた。
「なんなのよ」
 紫のことは気になるが、いつも何を考えているのか分からないし、紫の行動をいちいち気にかけていたらきりがない。
 霊夢は空になった湯呑を縁側に置いて再び空を見た。
 流れる雲を眺めながら、いまだに止まらぬ腹の虫の鳴き声に耳を傾ける。
 まるで「なぜ紫の提案に乗らないんだ」と抗議しているかのようだった。
「宴会かぁ……」
 また呟いて、霊夢は湯呑を持って室内に戻る。
「集まるかしら」
 わずかに期待を込めた言葉に返事をするように、腹の虫がまた鳴ったのだった。