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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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つぶやきろぐ

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【静帝】

悪い。咽頭から搾り出すように告げた言葉はかたちのみのものだった。握り締めた手のひらの下で小さな指がきゅっと動くのがわかる。縋るようにおずおずと細い指が絡んだ。ふるふるとかぶりを振って、見上げたこどもは小さくわらう。先ほどまで、あんなにほろほろと涙を流していたというのに

小さな耳朶にひかる蒼い石。こんなもので全てを奪い去ることなど叶わないことはわかっている。それでも少しでも遠ざけることができるのならと愚かしくも願ってしまった。神という、敵うはずのない恋敵から、帝人を―――

こどもは困ったように微笑んだ。もう、いいんです……細い腕が男の首に絡む。ぼくをしずおさんのものにしてください。耳元で密やかに告げられた言葉に堪えきれず細い身体をかき抱く。震える小さなくちびるに喰らい付くようにくちづけた。まろい頬を流れる、ひとすじの雫には気づかないふりをして

(ふかくふかく ふたりでどこまでも堕ちる)
作品名:つぶやきろぐ 作家名:長谷川桐子