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ふざけんなぁ!! 4

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帝人は貰ったばかりのタイヤキメーカーをガスコンロにかけ、うきうきと刷毛で油を型に塗りたくった。



★☆★☆★


その頃、平和島静雄は、かつて無い程のピンチを迎えていた。
会社の休憩所には現在、赤紫色の上品な風呂敷に包まれた三段重ねの巨大な重箱弁当が、存在感たっぷりに置かれている。

勿論これは、現在新羅の家に入院している、静雄の愛しい帝人が製作し、届けたものではない。


「静雄、お前さ、これどうすんだべ?」
「こっそり捨てる……、のは、ナシっすよね、やっぱ……」
「だったら最初っから、受け取るんじゃねーっつーの」
「でもトムさん………、俺、一度は断ったんす。そしたらあの娘、身も世も無く、目の前で泣いちまって、仕方なくて………」


『好きです。好きです。平和島さん、貴方が本当に好きなんです!!』


会社の建物の前で静雄を待ち伏せし、頬を真っ赤に染め、半泣きで、これを手渡してきた女子高校生がいた。

『私、贄川春奈と申します。私、貴方を愛してしまいました!!』


その子は丁度一週間前、あの来良の最低臨時教師………、那須島隆志が売ろうとした少女だった。
好いた男の借金の為、己の体を売ろうとしたぐらい、一途な女だ。
ぎらぎらと、どっか一本ネジが吹っ飛んでいそうな異様な雰囲気に、静雄の動物的な勘も警報を鳴らした。
この女は関ったら最後、ストーカーになりそうな類だと。

だから『俺、婚約者がいるから、受け取れねぇ』と、即座に断ったのだけど。
流石の池袋最強も、女の涙には勝てず、そして厄介な弁当が、ここにこうして机の上に乗っかる運びとなったのだ。


溜息をつきつつ、風呂敷を解き、一番上の蓋を開いて覗き込む。
そして、静雄は再び後悔した。


「……トムさん、これって.……喰えるんすかね…………」
「……まぁ、努力は認めてやれよ。うん………」


重箱の中は、色とりどりおかずが隙間無く埋まってはいたが、そのどれもが半分消し炭状態で、とてもまともに食せる代物ではなかった。


作品名:ふざけんなぁ!! 4 作家名:みかる