風信子石の屈折率
序
イシとは個人の波長に合わせて作られる個人専用の道具である。
個人に合わせて作られるため他者が使用することは出来ず、長時間、波長が合わない者が触れていたり、使用者が放置しているとイシは塵埃と化す。また波長の他に諸量が必要となり、諸量の伴わないイシは置物にしかならない。波長によって異なる音を出し、この音が接触することで諸量の提供、受領が可能となる。
イシの形容は様々だが凡その場合、鉱石や輝石に似た物質から成り、使用者によって異なる付加を得る。付加は任意で、もしくは自動で働く。これもイシによってことなるが、その効力は付加によってのみ対処され、その他の要因には阻害されない。
波長さえあればイシを作ることは可能であり、そのための機関もある。しかしイシの特性上、犯罪に使われると厄介な側面を持つことも否定は出来ない。故に公式の機関ではイシを作った者の情報を管理しているし、規律を設けて犯罪への関与を未然に防ごうとしている。それでも非公式の機関で作られたイシを使われてしまえばどうしようもない。当然ながら非公式的に作られたイシは持っているだけで合法と非合法の中間線上、もし犯罪に使えば罪科は上乗せされる。
少年は非公式も非公式な闇医者のところでイシを作った。もう彼が公式の機関に属することはない。何人もの友人知人に作ること自体を止められたし、特に親しい2人からは何故せめて公式の機関で作らなかったのかと怒られた。そして諦められた、何を言っても無駄なのだろう、と。実際、何を言っても結果は変わらなかっただろう。
少年は無意識に笑っている。