風信子石の屈折率
「帝人がイシ作るって言って聞かない」
「やっぱり止めるべきですよね」
カンカンカン、と踏切の鐘がなる中で茶髪の少年と眼鏡をかけた少女が、その音に紛れて会話する。
「危ないっちゃ危ないしな」
「狙われ易そうですし」
「……言ってやるなよ」
この踏切の遮断機は一度下りると長いこと上がらない。しかし今、少年も少女も早く上がれとは思っていなかった。
「私達のせいでしょうか」
少年は中学時代から公認の機関で作ったそれを、少女は小学校高学年から母の形見であるそれを持っていて、必要とあらば使ってきて、しかし3人でいることが多かったのにもう1人の少年だけは持っていなかった。少年も少女も彼に作れとは一言も言っていない、作って欲しくなかった。自分を誇示するために他者を襲う輩が絶えず、故に自他共に認める喧嘩の出来ない彼に作らせようと思える筈がなく、だというのに最近になってそれまで何も言わなかった彼が作りたいと言い出し、言って聞かなくなった。
「そうだとしても、そうじゃなくても、結果は変わらない気がするけどな」
「そう、ですね」
彼が言い出した時から、少年も少女も止めろと言いながら半ば諦めていた。無意識に浮かぶあの、天災の中ですら変わらないだろう笑顔を見た時から。
「でもまあ、止めるべきだよな」
「止めるべきですよね」
うん、と同時に頷いたところで電車は通り過ぎ、遮断機が上がる。しかしそこへ件の彼から少年へとメールが届き、
「――――はァ!? もう作ったって何だそれ!? しかも闇って怪しすぎるだろ!!」
「場所は分かります、とにかく行きましょう」
2人は駆け出した。
キョウトウ しますか ?
⇒ はい
いいえ
紀田正臣
イシ:黄色の鈍器
付加:形状をある程度は変えることが出来る。
但し、鈍器に限り、また使用中は変えることが出来ない。
園原杏里
イシ:赤色の日本刀
付加:斬りつけた凡その相手を支配することが出来る。
備考:彼女のイシは母親のものであり、本来なら彼女が使うことは不可能。