二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆあたり限界サティスファイ

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「赤み大分引いてるや。よかった。」
「だから気にするなって。」
スガタの苛立ちともとれる台詞にタクトは笑顔を見せた。
「気になるって。」

スガタを振り返っていたタクトの体に、水中で何かが触れた。
「ふわっ!」
驚いて背中を仰け反らせたが、向かいからはスガタが体を寄せていた。
タクトの背中から脇腹を抱き、左肩に額を押し付けてスガタがもたれ掛かってきた。
「・・・はあーーーー。」
深いため息を吐く。
時々ノックアウトする。タクトの笑顔、タクトの言葉。
一方タクトは硬直である。
頭の中では全タクトが叫んでいる。
「あの、スガタさん?いつも・・唐突なんですが。」
そうだ、初めてキスされた時みたいだ。
「んぅ。」
返事ともとれない声がスガタから漏れた。
あれから一度も見なかったけど、最初にキスされた時、スガタはすがっているようだった。今はそれに似てる。
タクトの言葉は逆効果に、スガタは肩にアゴを乗せると左手も背中に回された。
ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!
喜びのタクトも、怒りのタクトも、悲しみのタクトも、楽しみのタクトも同時に叫んだ。
「ちょ、ちょ、ちょちょちょっと!!」
「吃り過ぎ。」
「ちょっとちょっとちょっと!!キケンですよ!」
こうやって抱き合ったことだって何度もあった。
キスすれば自然と背中に手を回したし、それはそれは常識的な友人のスキンシップを疾うに飛び越えた二人だ。
でもコレは、危険すぎる!とタクトは思った。
肌が!だって肌が直で!
タクトは自分の手が緊張で震えているのに気づいた。
情けなくなると、どうしてスガタはこんな風にタクトに触れたがるのか疑問になった。
「危険だな。」
ぽつりとスガタが呟いた。
続けて何か言おうとしてスガタは口を開いたが、のみ込んでタクトに口づけた。
体が近づいて反射的に、タクトはスガタの腕を掴んだ。
普段のキスとは違う、シチュエーションがヤバ過ぎる。
近づくと色んな所が触れ合う度に、全て直なので頭が爆発しそうだ。
タクトは若干涙目になり、もうだめかも。とネガティブな言葉が頭に浮かんだ。
けれどキスは気持ちいいので、タクトの頭の中はしばらくすると大人しくなった。
さっきは避けられてしまったから、今度は大人しく答えようと思った。
「もうだめかも。」
代弁するようにスガタが言った。
動揺と混乱と湯あたりで息が上がっているタクトは、「ふえ?」と情けない声を上げた。
スガタはそんなタクトをまじまじと見据えた。
「タクト、僕もうダメかもしれない。」
なんとも思っていないのに、タクトとするキスについて。
タクトがキスに答えると、欲情を抑えられなくなる。いつのまにか、いや最初からそうだ。
「限界超えたらどうなるだろう?」
「限界?何が?」
「我慢できそうにない。」
「我慢?何の?」
スガタの瞳があまりに真剣だったので、タクトもひたすらそれを見つめ返した。

どこかで敵わないと分かっている。
タクトという存在に。
どうやっても太刀打ちができない気がする。
敵わない人間なんて本当は世界中どこにでもいる。
なのにどうしてタクトにのみ、こんなにも競争心と劣等感と、優越を煽られるんだろう。
出会った時からライバルなのだ。そういう存在が世の中にはある。
こんな風に仲良くなる相手じゃない。
なのにタクトは近寄ってくる。
タクトはスガタをライバルだなんて思っていないのだ。
屈託のない笑顔で友達だと言う。
それがこの上なく嬉しい。
大切だという気持ちと、敵わないという敗北感。
感情がめちゃくちゃになって。

友情という名の元に、タクトを支配してしまいたい。

「時々歯止めが効かなくなる。」
タクトがほんやりとのぼせた瞳で見つめ返す。
「キスだけじゃ我慢できない。」
タクトは数秒間を置いて、みるみる表情を唖然とさせた。
言葉を探してか、思考をまとめてか、息をのみ込むばかりで吐くことを忘れている。
ようやく息を吐いたが言葉が後に続かなかった。
はくはくと口だけ動かしていたが、まったく頭は動いていない様子。
「だめだなあー。」
そう言うとスガタはタクトから身を離した。
風呂場の淵に頭を乗せて、天井を仰いだ。
めちゃくちゃにしたい。こわしたい。
その気持ちがどんどん増幅している。
自分のどす黒い感情のために、タクトを利用したい欲求が治まらない。
「タクトも、こんなことにつき合うなよ。」
そうスガタが呟いた。懇願にも似て。

「構わないよ。」
その言葉にスガタは、ゆっくりとタクトを振り返った。
さきほどまで動揺して、言葉を忘れていたタクトはもういない。
湯気に巻かれながらタクトが、落ち着きを取り戻して言った。
「半分持つって言ったでしょ、スガタ分を。」
「壊れるよ?」
「甘く見ないでよ。」
タクトはにやりと笑った。
「スガタが背負ってるものなんて、僕には大したことないよ。」
「・・・・。」
やっぱり敵わないんだなあと思った。
「生理的にとか、自尊心とか、あるだろ?」
「生理的にも、プライドも、無理ならここまで来てないよ。」
こういう時、こういう風に、そんな状況も平然と。
タクトは受け止めてくれる、だからやっぱり敵わないのか。
「本当に意味分かってる?」
「・・・・・・・・・・分かってるよ。」
湯あたりしているだけが理由じゃない、少し頬を赤らめて、タクトが照れ隠しながらつぶやいた。
それがおかしかったので、スガタは満面の笑みをみせた。
「お見それしました。」

さわやかな友情の喜びを感じて、直後。
タクトを支配できるという快感に胸の奥が踊った。
そんな不謹慎な自分に罪悪すら同時に感じて。
「もう湯あたりするよ。先出てるね。」
それすら受け止めてくれるのだろうと思った。
「ああ、僕もすぐ出る。」

それは今夜なのか、もっと先なのか。