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【それは始まりにも、終わりにも似ていて】



最初はもちろん、なんとも思ってなかった。
むしろ印象は悪いほうだったと思う。

おせっかいなんだよ鬱陶しい、とか。
なんかちょっと生真面目すぎるんじゃねぇか堅苦しい、とか。

けれど、それが少しずつ変わっていって。

チビっこいくせにがんばるじゃないか、とか。
いろいろ苦労してるんだな、こいつも、とか。

どんどん、変わっていって。

あー、もうなにやってんだよ危なっかしい、俺に任せとけって! とか。
仕方ないから、最後まで付き合ってやるよ。 なんて言ってみたりして。

この俺が。

・・・変わっていって。

一人で溜め込んでんじゃねぇよ、ちったぁ吐き出せよ、とか。
頼れよ、もっと! なんて思い始めたりして。

いつからか、目が離せなくなった。

力はあるのに、それでも華奢に見える肩や、一人のときに見せる、少し暗い表情とか。
真っ黒で透明な瞳や、年齢に似つかない綺麗な笑顔、とか。

なんでこんなにあいつの事ばっかり考えてしまうのか、自分でも分からなかった。
おかしい、とも思った。

けれど、思わず抱き寄せてしまって、はじめて。

――あぁ、好きだからか。

すとん、と胸のつっかえがとれたように、全て納得がいった。


【それは始まりにも、終わりにも似ていて 1】


「え、ちょっ、ククール?」

――あぁ、やってしまった。

動揺するエイトをよそに、ククールは自分でも驚くほど冷静だった。
周りの景色を眺めて、静かだねえと人事のように思う程に。

今夜の空はどんよりとした雲に覆われていて、星は見えない。
そのため民家の窓からのぞくやわらかい灯りの他に光はなく、辺りは漆黒の闇に覆われていた。
猫さえおらず、自分と腕の中の人の呼吸以外に音はせず、耳の奥がきんと痛むほど静かな夜。

「・・・ククール?」

聞いてる?と再度反応をうながしたエイトの声は、どこか緊張と苛立ちを含んでいて。

そりゃあそうだろう。
真夜中に、ひとり外に出て座り込んでいる仲間を心配して、どうしたのと顔を覗き込んだ次の瞬間、いきなり手をひっぱられて強く抱きしめられたのだから。
――しかも、男に、だ。
驚かないほうがどうかしてるよな、と苦笑する。

「ちょっと、ククールってば、聞いてる!?」

いい加減にしろ、といわんばかりの大きな声に思考途中から現実に戻る。
腕の中でもがく感触に、あぁ、そういやまだ抱きしめたままだったっけとするりと手を離した。

「悪りぃ、エイト」

両手を上げて苦笑半分謝ると、怒り顔だった彼は眉を少し下げて困ったように首を傾げた。

「どうしたのさ、いきなり」

「いや、…あぁ、うん」

自分でもよく分からない、なんて言ったらエイトは怒るだろうか。
実際、――言い訳に聞こえるかもしれないが、無意識だったのだ。
宿で他の仲間が寝静まったあと、ぱっちりと目が覚めてしまって、どうにも眠れなくなってしまった。夜風にでもあたるかと外へ出て、座り込んでいろいろな考えをぼーっとめぐらせていたら、彼がひょっこりやってきたのだ。
これには驚いた。
部屋を出るときちらりと見たときには、ぐっすり眠り込んでいて起きそうな気配なんてなかったはず――だったのに、彼はいまここにいる。気配でも察して起きたのだろうか。
どうしたの、と声をかけられて、顔を覗き込まれた次の瞬間にはもう、抱きよせてしまっていた。

「なにかあった?」

先程からたいして間をおかず、エイトから容赦なく質問が飛んできて。
おいおいちょっと待ってくれよ、そんなに急かさないでくれ・・・なんて、自分勝手にも思ってしまうほど焦っている自分に苦笑してしまう。

それにしても。――さて、どう答えたものなのかとククールは考えをめぐらせた。

実はさっきの短い間で、ひとつ気付いたことがあるのだ。
厳密に言えば、彼がそのことを無意識にでも「知っていた」のはもう随分と前なのだが、実際にはっきりと自覚したのは今日、それもついさっきということになる。

――俺は、エイトのことが好きらしい。

それはとても簡単なことで。
けれど、なにより複雑で。

ククール自身、自分の感情に驚きはしなかった。
むしろ――あぁ、そうなのかと、あっさり納得がいくものであった。
そもそも彼に声をかけられる前から、夜の風にあたりながら考えていたこともエイトのことであって、自分の彼に対する感情がどんどん変化してきたことに関してどうしてだろう、ともやもや思い悩んでいたのだ。
だから体が無意識に反応したことで自分の感情に気付いて、むしろすっきりしたくらいで。

けれど。
ややこしいのはこれからだ。

目の前には、困り顔のエイト。
どう説明をつけたものか、どう言い訳をするものか、それが非常に重い課題としてククールの肩にのしかかっていた。
作品名:no title 作家名:トモ