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1/23クロスロード新刊本文サンプル

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「おはよう、おやすみ、あいらぶゆー!」/ 36P(本文32P) / 300円




■ いってらっしゃい ■


制服姿の帝人と、黒コート姿の臨也が玄関先でにらみ合っている。
帝人が通学する時間は毎日決まっているので、いつの間にか臨也もそれにあわせて家を出る習慣がついたのだけれども、その前にこの玄関で、ほぼ毎日恒例の一勝負が待っているのだ。
「……いきますよ」
ぐっと身をかがめて、拳を握る帝人。
「……がんばる」
いまいち弱気に答えて、ぐっと両手をグーにする臨也。
いざ、今日も決戦のとき。


「最初はグー!じゃんけんぽん!」


……まあ、すわ喧嘩かと思った人間は、この辺りで一気に脱力だろう。だがしかし、何故この二人はこんなにも真剣に、じゃんけんをしているのか。
「負けたぁあああ!」
「よしっ!」
がっくりと玄関マットの上に崩れ落ちる臨也、勝利のガッツポーズをする帝人。その帝人が、きらきらの笑顔で臨也に向き直る。
「さあどうぞ!」
両手を広げてウエルカムの姿勢だ。対する臨也、崩れ落ちた玄関マットからよろよろと立ち上がり、そんな帝人の笑顔にうわあ、と頬を染めてみたりしつつ、もじもじと手を組んでいる。
「あ。あのさ、えと、その……」
「何をしているんですか臨也さん。早くしないと僕、遅刻しちゃうじゃないですか」
「ううう、分かってるよ!分かってるけど、その、ほら、目閉じてくれると嬉しいんだけど!」
「仕方が無いですねえ、はいどうぞ」
ここまで言えばお分かりだろう、そう、この二人は「いってらっしゃいのキス」をどっちからするか、を賭けて毎朝じゃんけんをするのである。バカップルが!と容赦なくツッコミを入れていただきたい。っていうか誰かとめてやれ。
だがしかし、二人だけの世界に第三者は存在せず、バカップルはどこまでもバカップルであった。
目を閉じて準備万端の帝人に、臨也はそっと近づいて、その肩に手を置き、これ以上ないほど顔を赤くしながらも、ああもう帝人君は間近で見ると余計に可愛いなあ、まつげ長いなあ、なんて思いながら、精一杯の勇気を振り絞るのである。
がんばれ俺!ちょっとちゅってするだけだから!
ちゅ、っと音を立てて、真っ赤なリンゴみたいになりつつ臨也が唇を落としたのは、おでこ。
「……でこ萌え?」
いまいち不本意そうに目を開けた帝人がぼそりと呟く。
「……しいて言うなら、帝人君萌え?」
真っ赤な顔で目を泳がせながら、精一杯の反論。改めて向かいあったらどうしてキスなどできようか。いやできまい。難しげに顔をしかめた帝人は、上目遣いで臨也をじっと見上げた。
心の声がいろいろ聞こえる気がする。
「無、無理無理無理、これ以上無理、だって考えてみてよこれから仕事だよ?仕事に帝人君にちゅーしちゃった(はあと)なんてわくわく気分で行けって言うの?そりゃこれからピクニックに行くならそれでもいいよ?デートに行くとかなら最高だよ?でもこれから俺が行くのは仕事なんだよ!分かってよ!」
 でれでれした顔で出勤したら、波江になんて言われるかわからない。というか仕事なんか手につかない。言い切った臨也に、ふーん?と帝人は多少機嫌悪く。
「なるほど、よくわかりました」
 こっくりと頷いた帝人、そのまま靴をはき、玄関に立ち、くるりと振り返ってにっこりと。
「じゃあ仕事、お休みにしちゃえばいいと思うんです」
「へ?」
 伸ばされた手は、迷いなく臨也の黒いシャツをつかみ、遠慮無く引き寄せてくる。
 えっ、ちょ、まっ、と何事か言いかける臨也の言い分など、帝人が聞く義理はない。だって恋人同士はラブラブするものだ。だいたいジャンケンに負けた臨也が悪い。
 軽く背伸びをして、その首に両腕を回し、唇をしっかりと重ねる。これから学校だからそれで我慢、離れかけた唇をぺろりとなめて、帝人はにっこりと微笑んでみせた。
「次の時は、これくらいはお願いしますね」
 じゃ、行ってきます!
 元気に学校へと旅立つ帝人を呆然と見送り、臨也はしばらくの後、ばったりとその場に崩れ落ちるしか無いのだった。
 ああもう顔の赤さが尋常じゃない。
 とりあえず今すべきことは、携帯を取り出して電話をかけることだ。


「もしもし波江!今日、仕事休み!」


*こんな感じでおはようからお休みまでを追いかけていくバカップルの一日本です。