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1/23クロスロード新刊本文サンプル

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「春夏秋冬」 / 44P(本文40P) / 400円
(一章「折原臨也、決心の春」より抜粋。)



 とりとめのない会話をしながら、ダラダラとたどり着いた学校にはすでに数多くの生徒たちがクラス分けの掲示板の前に群がっていた。帝人が一瞬俺を見て、掲示板の方に視線を流す。
 見てこい、っていう意味だろう。
 全く俺のことを顎で使える人間なんて、世界広しといえども君しかいないよ。
俺はそういう意味を込めてため息を付いてみせたけれど、結局帝人には勝てた試しがない。俺のほうが身長が高いから、俺が行くのがあたりまえだとでも言いたげなその目にわかったよと答えて、人の波に飛び込む。
 とはいえ、俺が通ると分かれば、帝人曰く「モーゼの如く」人の波が左右に避けていくわけで。それが便利だと帝人は笑うのだろう。俺は便利屋か。一度くらいはそう言って反抗してみてもいいけれど、帝人の笑顔を見ていると、そんな気持ちもすぐさま消滅してしまう。
 ほんと、末期だ。
 二年の掲示板の前を、視線を滑らせて名前を確認する。折原の「お」と、竜ヶ峰の「り」さえチェックすればいいので、長くはかからない。
 まずは自分の名前をA組のところで見つけて、ついでに平和島の「へ」も一応確認し、無事に違うクラスになっていることに安堵した。それから次に「り」をチェックしようと視線をずらし、その前に、大きく一つ深呼吸をする。


 同じクラスになれたら。
 今年こそ、告白をしよう。


 それは俺が毎年毎年、クラスが変わるたびに決意を新たにしていることである。小学校三年生のころから毎年、毎年、性懲りも無く繰り返してきた春の恒例行事だ。
 俺は踏み出す一歩が欲しかった。ずっと前から欲しくて、未だに一度も手に入ったことがない。俺達の通っていた小学校も中学校も大きな学校で、毎年クラス替えがあったわけだけど、それでも七回連続で別のクラスになるって言うのは、ありえない程低い確率なんじゃないかと思う。さすがに挫けそうになりながら、ついでに、これは告白するなっていう意味なのかと自問自答しながら、毎年違うクラスに明記される帝人の名前を見つける。その瞬間の、安堵とがっかりが混ざりあった感情は、俺が目下一番苦手としているものだ。けれどもまた春になれば、今年こそと思うわけで。
 柄にもないと思われることを覚悟で言うなら、一年で一番緊張する瞬間が今だ。どくどくと高鳴る心臓を抑え、俺はゆっくりと、ゆっくりと視線を「り」のあたりにずらしていく。
 今年こそ、今年こそ。
 膨らみすぎていい加減、パンクしそうなこの恋心という奴を抱えて、俺は縋るように掲示板を見た。
 きっかけがなかったら、この距離が心地良すぎて何もできやしない。帝人は大事な親友で幼なじみで、だから好きだと告げてしまったら何かが変わってしまう。
 そりゃ、男同士だからとか、近すぎてそんなふうに見れないとか、そうやって振られることを覚悟してないわけじゃないけど、いい加減どうにかしなければ、俺にだって人並みの衝動があるんだ。
 例えば帝人の柔らかな黒髪に触れたいとか。
 風呂あがりの無防備な首筋にぞくりときたりとか。
 食事中に垣間見る舌に釘付けになったりとか。
 そのぬくもりを、この手に抱きしめたい衝動と、必死になって何度戦ったことか。帝人は想像したことも無いだろう。
 そういうものが積み重なって、大きなうねりとなって、俺のちっぽけな純愛を飲み込みそうになる瞬間が確かにある。そしてそれは年齢を重ねるごとに力を増し、今や常にぎりぎりのところで俺の中で暴れだす。帝人の無防備な、警戒心ゼロのその態度を、嬉しいと思う反面本気で憎たらしいとか、そういうのは絶対知られたくない。
 だから、どうかお願い、今年こそ。
 何でもいいから俺の背中を押してくれ。
 神様なんか信じていないから、俺が唯一絶対と信じる竜ヶ峰帝人その人に、願いをかける。緊張の汗が滲む手のひらをぐっと握って見つめた、その掲示板の白い紙の上。
 竜ヶ峰、を探してさまよった視線が、すぐに止まる。
 そこには、今までよく我慢しました、とでも言うように、その名前が堂々と鎮座していた。
「…っ、帝人!」
 焦って上ずった声。
 ああもう、本気で今俺、浮かれてないか?




「すっごいよ奇跡!同じクラスだ!」


*臨也→帝人から、両思いまでを1年を追う形で。もだもだします。