あたらしい朝
経一はうむ、とひとつ頷いて、逸人の顔を離し、ぱっと跳ね起きる。Tシャツを脱いで、さぶいさぶいと言いながらカラーボックスをごそごそ探った。自分が着るついでにこちらにも変な柄のTシャツを投げてよこした。
「朝メシぐれえ食ってくんだろ」
「うん」
逸人は身を起こした。さきほどの鈍の言葉を反芻していた。
お誕生日おめでとう。
生まれた日の朝いちばんに、死ぬことの話をした。それでも生きていて、身体があって、お腹も空くので、これから朝のパンと目玉焼きを腹に収める。付き合っておかしなシャツは着ることはしないけれど、彼らと朝食を共にする。二十七年目の冬の朝はやっぱり寒いけれど、思いのほか、健やかだった。年が明けるまでにやることもあるので、食べたら家を出て、学校へ行く。家、
くしゃみがひとつ出た。鼻をこすりながら、逸人はああそうか、と思っていた。
あの暖かさはきっと、家のようなものなのだ。