少年と少年の共生論
厭に空が低い朝だった。
今にも泣き出しそうな鈍色の曇天が、日の光の届かない仄暗さが、まるでこの世の終わりを告げるかのように、重く広がっていた。
私は、草臥れた布団から、音を立てぬよう這い出して、未だ隣で寝息を立てる愛おしい横顔を、そっと見やった。安らかな寝顔を見て、ふと心が軽くなる。嗚呼、今日もこうして、慈しむべき存在が隣に在る。その当たり前のような幸せを噛み締め、私は静かに障子の戸を開けた。
「おはよう雷蔵」
一通りの身支度を整え(つまり今私は完璧な“不破雷蔵”なのである)、私は雷蔵に声を掛ける。雷蔵は軽く身じろぎ、眩しそうに薄目を開けて「おはよう」と言った。
「雨が降りそうだ」
「ん、本当だね」
雷蔵は目蓋をこすり、大きく欠伸をした。実際雨の事などどうでも良いらしい。布団から起き上がり、頭をがしがしと掻いた。
「雷蔵、髪鋤くよ」
「うん、」
何気なく、雷蔵は私に身を委ねる。其れは五年という月日の間に培った、ごく自然な行為に過ぎなかったのだけれど。
唐突に、今、私は雷蔵を支配している事に、気づく。
雷蔵の首はただ無防備に其処に在り、心臓も、今私のすぐ近くで、鼓動を継続しているままなのだ。
(今、私が首に爪を立てたら)
(心臓に苦無を突き立てたら)
雷蔵は、どうなる?
背筋に、冷たいものが走った。