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少年と少年の共生論

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「‥三郎?」

どうしたの、と尋ねるは、雷蔵の目。その目に映るは、他ならぬ、私。
この手で、雷蔵を殺めようだなんて。この手で、雷蔵を殺める様を、いとも簡単に想像するなんて。

「三郎、何処か痛いの、‥三郎ってば」

無防備に晒された雷蔵の体。私を信頼し切った、雷蔵の、体。
(私は忍なのだ)
今更痛感する、その事実。いばらだらけの道無き獣道に分け入って、辿り続ける修羅の忍道の上に、私は立っているのだ。
やわらかな雷蔵の髪。いとおしい首、肩、胸。あたたかな鼓動。
そのどれもが、忍道を往く私を、じわじわと蝕むものでしかないというのに。

「私は弱いね、雷蔵」

貪欲に其れを欲するのは、此の私なのだ。

「君の暖かさに、いつも甘えてしまいそうになる」

私は其れが怖いのかも知れない。
いつしか感じられなくなってしまう暖かさなら、最初から感じない方が、良いに決まっているのだから。

「‥三郎、君は勘違いしているよ」

雷蔵はそう呟き、私の背中に手をまわした。耳を澄ませば、鼓動が聞こえそうだった。


「僕も忍だ。僕は君が考えているほど、弱くなんかない。君と同じように強くなってきた。僕は、君と同じ道を歩んでる。

僕達は、双忍だろう。」

雷蔵は、愛しいものを慈しむように、私を抱き締めた。おおらかで、あたたかな手のひらだった。

「雷、蔵」

「そんなことで悩むなよ、君らしくもない。僕の悩み癖まで、真似することないよ」

ぎゅう、と私の肩を握り締め、雷蔵は優しく笑った。
(此処に安らぎを見い出すのは罪なのだろうか。
其れならば私は、喜んでその罪を背負おう。)

いつの間にか鳴り出した雨音に、涙声は掻き消されていった。
作品名:少年と少年の共生論 作家名:じろう