サニーディ・サンディ
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「あ?ヒューズ中佐、出張ですか?」
「何かあったんスか」
何やら一仕事してきたのか、各々軍服の上着を肩に掛けたごれまたグダグダの出で立ちの見慣れた凸凹2人が司令室に顔を見せた。
一声掛けるだけのつもりだったのが、今ここにはいない筈の顔を見付けて足を止めたらしい。
「よー、殊勲賞2人―。久し振りだな」
「・・・何スか、それ?」
もう既にその時の事を忘れているのやら、慣れてしまって一々憶えていないのか分からないが、揃って?マークを飛ばす両少尉に向けて、ヒューズは豪快に笑ってみせた。
「なぁに、いー部下持って幸せだな、っつー話をしてたとこだ!」
「何処でなった、そんな話」
「うわ、何すかそれ!」
途端巻き起こるブーイングに一つ笑うと、よっし、とヒューズは一つ膝を打った。
「じゃ、日頃の鬱憤晴らしもかねて、遅くなったが今日は終了後打ち上げって事で!」
「何の打ち上げだ何の!」
「いーじゃん、唸るほど持ってるだろ、金。たまには本とデート以外に可愛い部下の為に使ってやれよ」
途端、ヒューズに向けて大喝采が飛ぶ。それに調子良く手を上げて応え、出張中の佐官は反論を封じられて面白くなさそうな悪友の肩をバシバシ叩いた。
「まま、事件解決最短記録樹立を祝って、って事で」
「お前が騒ぎたいだけだろう」
「まー、それもあるけど」
「大佐、でしたら後この一山、定時三十分前までに処理して頂かないと困ります」
「あー、別に大佐の財布貸して貰えたら、来るの後でいいですよー」
「・・・・・。」
「いー部下持って幸せだなぁ、ロイ?」
「・・・ハボック少尉」
呼び掛けは普段と同じトーンだった。だが、皆と同じくニヤニヤ笑っていたひよこ頭の動きが凍り付いたようにピタ、と止まる。
「・・・え」
向けられた笑顔はエセ臭くカンペキだった。
・・・何か頬に怒りマークが見えなくもないが。
「手伝え」
・・・ああ、何だって、こんな日に。
日頃の行いか?だって向こうのが絶対悪いぞ確実に。
そうブツブツ呟きながらロッカーへ向かうどんよりした同僚の背を、ブレダはポンポン、と叩いてやった。
あんまり慰めにはならなかったようだった。
取りあえず、今日も平和に、終了。
Fin
作品名:サニーディ・サンディ 作家名:みとなんこ@紺