16さいのこどもとかわいそうなぼく
むかしむかし。
あるところにぼくがいました。
ぼくはぼくで、ぼく以上の何者でもなくて、ただぼくのぼくはぼく以外の何かになる方法も知りませんでした。
でもぼくはわかっていました。ずっと、ずっと。意識するよりも前から、まるで呼吸でもするように、一つのことをずっとわかっていました。
ぼくはぼくじゃなくてぼくはぼくだけどこのぼくはほんとうのぼくじゃなくてぼくはぼくをすててほんとうのぼくをみつけなければならないこと。
だからね、ぼくはね。――さないといけないの。ほんとうにかわいそうなことだけど、それはしようがないことなの。ぼく以外のぼくじゃないぼくは、いらないこなの。ごめんねさよなら。ぼく。
心臓が止まって、呼吸が止まったら、それは死だろうか。ならぼくは死んだろう。
作品名:16さいのこどもとかわいそうなぼく 作家名:みざき