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ひかいきゆき
ひかいきゆき
novelistID. 21770
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ひそやかにはじまる(後)

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エンドウ・サリナは、嘆息した。
(ああ、なんて学年だろう)
これはなんというか、在るべくして集まってしまったのではないか?
そう舞台的な台詞を吐いてしまいたいくらい、今年の新入生は集まっている。
何がって、目立つ少年少女が。

皆水(ミナミ)の巫女、アゲマキ・ワコ。
シンドウ家の嫡男、シンドウ・スガタ。
彼ら2人は、元々が相当な話題性を持っていた。
けれどそれで収まらないのが、今年入学してきた1年生たちで。
たとえば、グラン・トネール財団総帥の妻である、ワタナベ・カナコ。
彼女の付き人であるダイ・タカシ、そしてシモーヌ・アラゴン。
シンドウ家の使用人であり、スガタのお側付きであるスガタメ・タイガ。

極めつけは、島の外からやってきたツナシ・タクト。

演劇部の新入部員たちのクラスへ立ち寄ってみて、サリナの嘆息は冒頭へ戻る。
(だって、さらに増えてる…)
見知らぬ顔が、それも非常に目立つ存在が、増えていた。
…別に、それは良いことなのだ。
自分も島の外の人間であるから、よく思う。
島は、閉鎖的だ。
だからこそ、外部の人間は多い方が良いこともある。
教室の外を遠巻きに取り巻いている…ようにしか見えない生徒たちを尻目に、サリナは開けっ放しの扉をコンコンと叩いた。

「お邪魔するよ、新入部員諸君」

すでに10分前から部活動の時間帯であるから、教室の外の取り巻きは帰宅部だろう。
教室に居るのはサリナの後輩たち、つまり大部分は演劇部の面々で。
「あっ、部長! すみません、遅れて…」
サリナの姿を見てハッとしたワコへ、軽く手を振った。
「構わないよ。私が気になって来ただけだし、それは正解だったようだ」
視線を彼女の向こうへやれば、やや日本人離れした少年の姿が目に入る。

「タクト、その人は?」

色白で、眼はルビーのように赤い。
綺麗な黒髪は少しだけ癖があるようで、ストレートではない。
真っ直ぐにこちらを見つめる彼は、明るく、そして裏表がなさそうだ。
(…なんか、快活な雰囲気がタクト君に似てるね)
彼に問われたタクトが、サリナを紹介した。
「ああ、彼女は演劇部の部長で、エンドウ・サリナさん。3年生だ」
紹介に合わせて、軽く会釈した。
「初めまして。君たちは、転校生…だよね?」
見覚えが無い上に、こんなに目立つ彼らを見逃すはずもない。
尋ねた相手は、こくりと頷いた。