かえりたい
「貴方は放っておくと、何処かへ行ってしまいそうですから。どこへも行ってしまわないように」
ジェイドの口から飛び出た言葉に一瞬、言葉に詰まる。
なんせ、あのジェイドだ。あのジェイドがそんなことを言うなんて、誰が思うだろうか。
「正確に言えば、連れて行かれないように。ですかね」
此方の緊張にも似た、驚愕などお構い無しにツラツラと大佐殿は言葉を連ねる。
一体全体、彼の言葉に俺はどう返せば正解なのだろうか。混乱しかかった頭を捻ってみるがよい答えが見えてこない。
そんな俺など気にも留めずジェイドは繋いだ手を引きながら歩き出した。
「さぁ行きましょう」
「あ、ああ」
隣で栗色をした長い髪が揺れている。
俺はそれを視界の端に留めながら、息をして、心臓を動かし、己の意思で前に進む。
結果、俺は死ぬことを許されなかった。