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願い事を叶えてあげる。

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いざにいの綺麗な赤の瞳が、揺れていた。
「みかど、くん」と掠れた声で僕を呼ぶ。
「うん、」と返事をすれば、いざにいがぎゅって僕の手を握りしめた。
僕もぎゅっと握り返せば、いざにいの握りしめる力が強まる。
少しだけ冷えていて、心地良い。


「帝人、くん」
「うん、」
「何で…?何でそんなこと言うの?俺、ずっとずっと我慢していたのに、ずっと帝人君にとっていいお兄ちゃんでいようって思ってたのに。
 こんな……こんな時に、さいごのお願いってふざけないでよ。そんなの、こんなの認めない。こんなのがさいごとか、絶対に認めてあげない」


一気に捲くし立てられるように吐かれた言葉。
だけど、最後の方はちょっと聞き取り辛くて、聞き取り辛いのは、いざにいが。


「いざ、に……泣かないで。泣かないで、ねぇ…」


ぼろぼろ、綺麗な涙がいざにいの頬を伝って落ちている。
そういえばいざにいが泣いてる姿を見るのなんてこれが初めてかも。
そんなことを頭の隅で考えながら、いざにいの頬に触れようとしたけど、いざにいの僕の手を握る力が強くて敵わなかった。


「馬鹿……馬鹿だよ、帝人君」
「いざに…い」
「俺さ、気付いた時には帝人君のことが好きだった。でも君を苦しめたくなくて気づかないふりをしてた。
 ……っだけど、こんなことになるんだったら、伝えればよかった、好きだって、伝えればよかった…っ」


苦しそうないざにいの声が、外で降り続ける雪のように白い部屋に響く。
いざにい、いざにいも僕を好きでいてくれたんだ。
僕の片想いじゃ、なかったんだ。


「…僕は、それでも嬉しいです」
「み、かどく…」
「いざにいが好き、ずっと好き。そのいざにいが僕を好きでいてくれた、それだけで」


いざにいがこんなに泣き虫だなんてしらなかったなぁ。
知れてよかった、いざにいの姿、いざにいの気持ち。


「いざにい、」
「……うん」
「大好き」
「うん、俺も。だからあげる」






「俺の一生分の恋、みーくんにあげる」






「みーくん」、その呼び声に眼を瞠る。
何時からかいざにいは、僕のことを「帝人君」と呼ぶようになった。
その呼び方も嫌いじゃなかったけど、何だか線を引かれたようで悲しかったのを覚えている。


だけど、また聞けた。
いざにいの「みーくん」、そして一緒に、約束。


「本当に、くれるの?」
「あげるよ、みーくんに全部」
「うれ、しいな……」


ねぇ、今僕はちゃんと笑えてますか?
笑えてると、いいな。




「いざにい、好き。大好き、ずっと」
「俺も好きだよ、一生、みーくんのこと」




初めてしたキスはしょっぱくて、悲しい味がしたけど。
僕の心はいざにいで満たされて、幸せでした。




(それがたとえ、もろいものだとしても)




願い事を叶えてあげる。
(神様なんかはいないから、俺が叶えてあげる)