願い事を叶えてあげる。
(あと、どれだけ?)
(ぼくにのこされた、ゆるされたじかんは)
あぁ、僕は悲しかったんだ。
死んでしまうのが、いざにいと離れるのが。
でもそれだけはどうしようもなくて、だけど。
(いざにいのことが、 )( 、 なの)
(いざにいの になりたいよ)
「……ざ、に」
「帝人、君?」
「いざにい……いざにい、」
「帝人君、どうしたの?何処か痛いの?」
いざにいの問い掛けにもちゃんと答えることができなくて、ただ涙が溢れるばかり。
ふるふると首を横に振ると、いざにいは困ったように笑って言った。
「帝人君…何でも言って。俺が叶えてあげる、だから泣かないで」
「な……で、も?」
「うん、だからお願い」
帝人君の泣き顔を見るのは、辛いよ。
いざにいの言葉が、脳に、心に浸透する。
なん、でも。
本当に?
(ねぇ、いざにい。僕、ぼく…)
「いざ、にい」
「うん?」
「僕ね……いざにいのことが、好き」
「っ、」
「幼馴染とか、お兄ちゃんのように思えないの…いざにいのことが、そういう意味で好きなの」
「み、か……」
ほら、困ってる。
だけどもう隠せなかった、隠したまま生きることなんてできなかった。
何時か僕はいざにいの傍にいられなくなる、いざにいはずっと生きていく。
困らせてごめんなさい、ごめんなさい。
「だから、さいごのお願い」
「いざにいの一生分の恋を、僕にください」
作品名:願い事を叶えてあげる。 作家名:朱紅(氷刹)