どうしてこうなった
場所は小さなカフェ
俺こと黒羽快斗は青子に『クレープ屋に行こう』と誘われ、なんの疑問のよちも
なくに青子についていった。
しかしその先にあったのはクレープ屋ではなくカフェ。
しかもそこにいたのは名探偵こと工藤新一と、蘭ちゃん。
俺超びっくり。
ざっと言えばこんなもんだろう。
「あのね、蘭ちゃんに定期券拾って貰ったんだ!それで仲良くなって……」
自分と蘭ちゃんの出会いを俺と名探偵にベラベラ喋りだす青子。
あぁお前はそうだろうな。お前と違って俺はあれよ?好敵手が目の前に居ちゃうわけよ。
それにさっきから名探偵、なにか言いたげにこっち見てるし……絶対正体ばれたでしょ。
青子、青子っ!ダッシュで逃げて良い?!
焦りと緊張でやけに喉が乾く。
「黒羽」
「はっはいぃ!」
(きたっ!!)
ついに目の前にいる名探偵が俺に話しかけた。
畜生。会話なく帰れるかもと淡い期待を抱いたのに……。
「な、なんですか工藤君」
スッと俺を指差す。
え。なになに?急に『犯人はお前だ』とか言われちゃう感じ?ちょ、まじ勘弁。
ここカフェだから!人結構多いから!
「メロンソーダ」
--ん?
身構えた俺に予想しなかった単語が掛けられた。
「空じゃん。俺のココアやるよ、一口しか飲んでねぇし。俺には甘すぎて飲めなかった」
指を差したのは俺ではなく空のメロンソーダだったらしい。
ひとまずセーフだったようだ。に、しても名探偵にもこんな優しさがあるなんて
。意外だ。
「あ、ありがとうございます」
水滴がついたコップを手にし、
俺はおとなしくココアを口にした。
甘い味が口の中で広がっていく。なかなか美味しい。
「美味いか?」
「はい。美味しいです」
正直に感想を述べた。しかし名探偵は何か納得していない様子。
「かしこまんなよ」
「……?何がですか?」
「敬語。同い年なんだからタメで良いぜ」
なるほど。そこが納得出来なかったのか。
名探偵は意外と友好的なんだ。
「すいません。俺、いきなりタメって無理なんで」
あたり触りのない答えを口にした。
実際はタメ口なんかにしたらすぐボロが出そうだからなんだけど。
名探偵はふぅん…と返して店員さんにコーヒーを頼んだ。
「すごいですね。コーヒー飲めるなんて」
「そうか?」
「はい。俺は甘いの大好きなんで」
名探偵はニッと笑った。
「頼んだのがメロンソーダ、しかもバニラアイス付きとなれば黒羽が甘党なの誰
にだってわかるぜ」
「……言うまでもなかったですか」
お待たせしました。と店員さんがテーブルの上にコーヒーとミルクとシロップを
置く。
名探偵は店員さんに会釈をして、コーヒーを一口啜った。
――ん?ちょっとまてよ?
「工藤君、ミルクとシロップは?」
「ん?あんなんいらねぇだろ」
――へっ!?
ミルクとシロップが蔑ろにされた怒りも沸くが、それ以上に俺は同い年でブラッ
クのコーヒーを平然と飲める人が居るなんて!と、わけもわからず感動した。
取り合えずこの感動を名探偵に伝えようと口を開いたが蘭ちゃんに口を挟まれる
。
そして爆弾発言。
「黒羽君マジック得意なの?」
女子は女子で話が進んでいたらしい。
いや、ていうかそれは言っちゃだめだろ蘭ちゃんっ!
良い感じに会話が進んでたのに!
「は、はい……趣味で少々」
名探偵の様子を見ながら恐る恐る答える。
しかし残念な事に名探偵は興味深々だった。
「まじで!?見せてみろよ!」
この誘いを断るとこの場の空気が悪くなると俺は判断。
「えっと………じゃあ一回だけ…ですよ?」
ついつい誘いに乗ってしまった。
「んーとじゃあ……。俺は手になにも持ってません!確認してください。」
名探偵と蘭ちゃんが俺の手をジッと見て頷いた。
「はい。良いですね?1…2…3!」
かけ声と同時に手を開くと、なにも無かったはずの手のひらには小さな花が出現していた。
「すっごい!黒羽君!」
蘭ちゃんの絶賛の声。
しかし名探偵は恐ろしい事にトリックを暴こうとしている。
――怖っ……。
多分俺が怯えた顔で名探偵を見ていたからだろう。蘭ちゃんは励ますように俺に声をかけた。
天使のような優しさを持った子だ。青子とは大違い。
「新一はマジックが好きだからついタネを暴きたくなっちゃうんだよ」
「え………そうなんですか…」
マジックのタネを暴きたくなるのはあきらかに好きだからと言う理由じゃないだ
ろうけど、マジック自体が好きだなんて初耳だ。
「新一はね怪盗キッドが大好きなの」
蘭ちゃんはフフッと笑った。