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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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マゴノック・アオミタ・イーヨ<前編>

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《マゴノック・アオミタ・イーヨ》

※十年後を勝手に想像設定。九代目は早々にツナヨシにボスの座を譲り、現在は隠居ライフを満喫中。時折、老い先短い老人のワガママと称して無理難題をふっかけ、それに振り回されるツナヨシとザンザスを愛でる。「孫~孫が欲しい~」と、せがんではザンザスから非常に冷たい目で睨まれている。ツナヨシとはメル友。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「寒い。ムリ。死ぬ」
ガチガチと歯の根の合わぬ声でサワダツナヨシは呟いた。
あたりは見渡す限り一面、白一色だ。ゴウゴウと吹き付ける雪風に、今まで歩いてきた山道などとっくに見失っている。悪化する天候に追い打ちをかけるように日も暮れてしまい、気温は一気に氷点下。吹き付ける雪と風を少しでも避けるため、細めた視界に写るのは、白。白。白。
その中で唯一、異彩を放つこの男。吹雪の中に見え隠れする、黒髪、褐色の肌、真紅の双眸。男のコートも強風にあおられ、バサバサと音をたてて翻る。圧倒的な質量をもって吹き付ける雪と風に負けぬよう、男は怒鳴り返した。
「るせぇ!!元はと言えばテメェが蒔いた種だろうが!」
なんと言われようとも、体力も気力も限界だった。
せめてもの風避けに前を進む男の背中にべったりとくっついて、ツナヨシは叫んだ。
「そんなこと言ったって・・・どこにあるんだよ!!マゴノック・アオミタ・イーヨってぇぇぇえええ」
―――――真冬の雪山で、二人はまさしく遭難していた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

泣く子も黙るイタリア最大のマフィア、ボンゴレファミリー。
その十代目ボスであるサワダツナヨシの元に、ボンゴレ別邸から緊急連絡が届いたのはつい半日前のことだった。
相手はボンゴレ九代目が隠居している屋敷の執事からで、『九代目が倒れた』という。
主治医は風邪だと診断しているが、なにぶん年齢が年齢である。加えて今までの過酷な生活を考えると・・・。頭に浮かぶ不吉な映像をふるふると振り払うと、取るものもとりあえず、ツナヨシは慌てて別邸に駆けつけたのだった。

「九代目!ご無事ですか!!」
ノックもそこそこに、バタンと大きな音をたてて扉が開け放たれた。
いつもならばあり得ぬ騒々しさに、ベッドに横たわった屋敷の主は微笑を浮かべて顔を向ける。
「やあ、ツナヨシ君。元気だったかい?」
いつもと変わらぬ穏やかなブラウンの瞳にやわらかい口調、けれどその表情には疲労が影を落とし、声もいささか掠れている。枯れ木のような細い腕に点滴をつけて、ベッドに横になる九代目の姿にツナヨシの心臓が跳ねた。
「九代目!オレのことより、具合はどうなんです?!」
息をきらして駆け込んできたツナヨシはよほど慌ててきたのだろう、いつも以上にはねてくしゃくしゃの髪、火照った頬は耳まで赤く、ハアハアと肩で息をしている。
――――なんという、純粋でかわいらしい反応。
自分の息子とは全く正反対の、素直で純真なツナヨシに思わず目頭が熱くなり、感動すら覚える九代目なのだった。
「ああ、いや、わざわざすまないね。たいした事はないんだよ。ただの風邪なんだが・・・」
「風邪を甘くみちゃだめです!あの、何かオレにできることはないですか?食べたいものとか、欲しいもの・・・とにかく、何でも言って下さい」
「そうかい?ではその言葉に甘えて、一つ頼みをきいてもらえないだろうか」
「はい、何でしょうか?」
「うんその前に、少し待ってくれないか。もうそろそろあっちも着く頃だと思うんだが」
「え?」
――――一体『何が着く』というのか。
首を傾げたツナヨシの背後で、突如扉が砕け散った。
いや、正しくは外から蹴り開けられたのだが、あまりの衝撃に扉の強度がもたなかったのだ。いちおう扉の材質は最高級のオーク材+防弾仕様なのだが、それを気にもとめない破壊力。
そして飛び込んでくる、聞き覚えのありまくる怒鳴り声。
「ジジィ!てめぇ、いつの間にこんなモン撮ってやがった!!」
(え、まさか・・・)
イヤな予感に恐る恐る背後を振り返れば、怒りに燃える真紅の双眸、黒髪の長身。言わずと知れた、九代目の養子にして、独立暗殺部隊ヴァリアーの隊長、ザンザスである。
常日頃から凶悪な顔つきをしているが、今日のザンザスはいつもに増して機嫌が悪い。心底怒っているらしく、右手には既に憤怒の炎が光を放っている。
「ひぃ!ザンザス、ここ室内!!火気使用厳禁!!」
反射的に怯え後ずさるツナヨシとは対照的に、九代目はにこやかにソレと会話する。
「やあ、ザンザス。やっと見舞いに来てくれたんだね」
「見舞いだぁ?あんなモン送りつけてきやがるとは、オレはてっきりかっ消されたいのかと思ったぜ」
「だってお前、一向に来てくれないじゃないか」
ふう、とため息をつき、いじけた様子の九代目と、今にも九代目に炎をぶつけようと構えるザンザス。
仮にも前ドン・ボンゴレに炎を向けているにも関わらず、九代目の警備は沈黙を保ったままだ。加えて、凶器を向けるザンザスも、向けられた九代目も、どちらも特別気負っている様子はない。その態度はいたって普通、日常茶飯事といった雰囲気である。
(きっと、いっつもこんな感じなんだろうなぁ・・・・)
この親子の複雑かつひねくれた愛情表現(コミュニケーション)(?)を垣間見たツナヨシだった。進んで知りたいわけではなかったが。