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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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ボンゴレ式・天国と地獄

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―――気分転換に庭を散歩していたら、変な物が落ちていた。


ボンゴレ式・天国と地獄 -HEAVEN and HELL-


サワダツナヨシは多忙である。
ボンゴレファミリーというイタリアマフィア界でも一、二を争う巨大組織を動かすトップとして、表の家業に裏の家業、毎日大量に運び込まれる書類に目を通し、案件を修正し、決済し、処理していく。加えて、基本的に騒動が絶えないボンゴレファミリーにおいては、通常の業務外にも大量の事後処理(公的機関への折衝だったりとか、破壊した町の復興工事だとか、構成員への鉄拳制裁だったりとか、他ファミリーへの「ウチの者が迷惑かけてごめんね」電話だったりする)が待っている。
――――こうして、ボス業に忙殺される毎日だ。
だが今日は珍しいことに、午後に入ってしばらくもすると山と積まれていた書類も片付き、なんと、ぽっかりと空いた自由時間ができてしまったのである。
「嘘、信じられない・・・」
寝不足に霞む視界に太陽が眩しい。
ツナヨシは両手を胸の前で合わせると、瞳を盛大にキラキラさせ、くるりと回転。
また面倒事が舞い込んできては大変と、そそくさと執務室から飛び出したのだった。


とは言っても、そう遠くまで行けるはずもなく。
気分転換に、屋敷の庭を散歩することにした。
物騒、剣呑な書類の山から解放されたツナヨシは足取りも軽く、るんたったとスキップするような勢いだ。
広い庭には遊歩道が設置され、小さな丘や東屋、木立に可憐な草花が植えられ、一年を通して鮮やかな色彩が見る者の目を楽しませる・・・のだが。
「ん?」
ご機嫌に歩いていたツナヨシの視界に、得体の知れない謎の物体が入ってきた。
遊歩道の真ん中にべちゃりと横たわる、巨大なボロ雑巾の様な黒と銀の細長いもの。
ゴミ出しは今日じゃないし、それにこんな庭のど真ん中にゴミを出すワケもない。
何かと思って側に近づき、しゃがみ込んでよくよく見れば、所々焦げて、擦り切れ、破れた黒いコートに、ぐしゃぐしゃにからまった長い銀髪、細身ながらも引き締まったしなやかな長身。
――――とてつもなく、見覚えがあったりする。
「おーい、大丈夫?」
ナマ暖かい視線をソレに向けて、ツンツンと生存確認をしていると。
「・・・つつくな」
未だ地面に倒れ伏したまま、力無い声が答えた。長い銀髪に邪魔されてその表情は確認できないものの、声からするとなんとか無事(?)のようだ。
毎度おなじみの光景と化してきた、ザンザスから過剰なるスキンシップをうけたヴァリアーの二代目剣帝かつ作戦隊長、スペルビ・スクアーロであった。
「何でこんなとこいんの?」
「投げ飛ばされた」
彼の言葉にキョロキョロと辺りを見回してみれば、屋敷の二階、ある部屋の窓ガラスが割れている。
確かあの辺りはヴァリアーの執務室がある区域で。
(・・・あそこから捨てられたのか)
ツナヨシは納得した。

ボンゴレ屋敷はワンフロアごとに結構な高さがあるので、二階といってもフツーの人間ならば、大けが・・・というか即座に病院送りの高さである。彼らの人間離れした素敵な関係を改めて目にし、虚ろに乾いた笑いを浮かべるツナヨシだった。
「えと、一応聞くけど。何で寝たまま?」
「アイツに関節キめられて動けねぇ」
「なるほど」
痺れが残っているのだろう、スクアーロは何とか腕を動かそうとしているが、かすかに指先が持ち上がる程度だ。
強烈な彼のボスの八つ当たりは、殴る蹴るに留まらずサブミッションにまで及んでいるようで。あの男の馬鹿力と無駄にハイスペックな技で、関節をキめられようものなら、速効ギブ。下手をすると再起不能だ。する方もする方なら、受ける方のスキルも並じゃない。さすが虐げられてもヴァリアーということか。ヴァリアークオリティ恐るべし。
「ルッスーリア呼ぼうか?」
「死んでもいらねぇ」
「じゃあ、ちょっと休んでる?と言っても、ここじゃ邪魔になるし」
辺りをキョロキョロと見回したツナヨシは、パッと顔を輝かせる。
「あ、あそこがいいや。よいしょ!」
「う゛ぉい!」
そう言うとツナヨシはスクアーロを近くの木陰に引っ張っていく。
いくら細身とはいえ成人男性を運ぶのは一苦労だ。両脇に手を入れ持ち上げるが、なにぶんスクアーロは長身だ。対するツナヨシは、本人は断固として否定するが、小柄である。何とか背中に担いだのはいいが、スクアーロの足がズルズルと地面をひきずってしまうのは致し方ないことだった。


そうして、なんとか適当な木陰にスクアーロを運んだツナヨシは、ふう、と満足気に息をつき、スクアーロを抱えて横に寝かす。
「ここなら邪魔にもならないし、誰かに踏まれることもないでしょ」
まるきり粗大ゴミ扱いだが、仮にもボンゴレ最強を誇る暗殺部隊の作戦隊長を踏みつけられる人間などそうはいない。いや、スクアーロの知っている限り二人だけだ。
一人は、ぐうたら、傍若無人のワガママ、暴力御曹司であり、もう一人が、甘々、お人好しの天然ボケ、『超直感』というトンデモ技を持ちながら極度に鈍いドン・ボンゴレである。
その希有な片割れは、何を思ったのかそのままスクアーロのすぐ脇に腰を下ろした。
てっきり去っていくのだと思っていたスクアーロは眉をひそめて問いかける。
「う゛ぉい、何してる?」
「ん?あ、オレ今休憩中なんだよね。ここ気持ちいいから、オレもちょっと休んで行こうかなって」
「・・・勝手にしろぉ」
呆れたスクアーロはプイと反対側に顔を向けるが、その瞬間、首に走った痛みに思わず呻き声が漏れた。
「っ!」
「あ、痛む?じゃあ、こっちの方が楽かな?」
まるで自分の事のように痛そうに眉を歪めたツナヨシは、そう呟くとスクアーロの頭をそっと持ち上げて、自身の太股の上に下ろした。
――――つまりは、膝枕というわけだ。
「な!おまっ」
突然の行動にギョッと目を開いたスクアーロに、キョトンと首を傾げるツナヨシ。
「ん、何?」
「仮にもドン・ボンゴレがっ!」
あわてるスクアーロにツナヨシはへにゃりと笑う。
「ああ。大丈夫だって、ここあんまし人来ないしさ」
――――問題はそこではない。
分かってない。こいつは全く分かっていない。
相変わらず、この頭の中はどうなっているのか、スクアーロは理解に苦しむ。
後頭部にはやわらかい感触。手持ちぶさたなのか物珍しいのか、ツナヨシはサラサラとスクアーロの銀髪を指で梳いている。
何というか、非常に落ち着かない。もし誰かに見られようものなら、即座に悶死してしまうような体勢だ。

(・・・そりゃ確かに楽だが、『快適』というより『快楽』に近い)
それを憮然とした表情にあらわすことはないが、チラリとツナヨシの様子を盗み見ると、いたって呑気な横顔。よほどご機嫌なのか、かすかに歌なぞ口ずさんでいる。
スクアーロの視線に気付いたツナヨシは、フッとやわらかな微笑みを浮かべると、もう片方の手を彼に伸ばす。小さな手はゆっくりとスクアーロの額から、目元、頬をたどり口元へ。そのひんやりとした指が、痛みに熱を帯びた体に心地よい。
「スクアーロってさ、眼も銀色なんだね。すっごい綺麗」
そう言ってひょいと覗き込んでくる琥珀色の大きな瞳は、あまりに無防備だ。
「ツナヨシ・・・」