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友達以上恋人未満

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毎日通る道を辿りながら、久々知は幸せそうに昨日食べた豆腐だの豆乳だのについて語った。俺は笑いながら相槌を打った。みんなはそんな俺達をおかしいという。だが、久々知が楽しいなら俺は話題なんて何だって良かったんだ。出来るならば、ずっと好きなものを語る久々知の笑顔を眺めていたかった。
ふと昼休みの三郎と不破との会話を思い出した。好き、って。言えば。言えたら。そしたら。
(言えたら苦労しないだろうが……!)
「ハチ?」
「おァ!」
気付くと久々知が俺を見つめていた。久々知の澄んだ瞳が、長い睫毛が、俺の方を向いていた。不思議と甘い香りがしたような気がする。気のせいだろうが。俺は驚いて数歩下がる。久々知は心配げに続けた。
「どうした、ハチ?お腹痛い?」
「違う違う」
首をぶんぶんふって必死で否定してやる。
「そっか……なんか考え込んでたから……もしかしてハチも私の話つまらない?」
「そ……んなことねぇよ!」
暗い顔で覗き込む久々知に焦った。気持ち、久々知の歩調が遅くなっていることに気付いた。
「みんな私の話つまんないっていうからさ……ハチにもつまんないって言われたら私困ってしまうな」
久々知は弱々しく笑った。俺は奥歯を噛み締めた。ここで大きな声で、お前と話してると楽しいよ!と叫びたかった。楽しいに決まってるだろ、だってお前のことが好きなんだから!と叫びたかった。叫んでしまえたらきっと楽になれたのに、臆病な俺は叫べなかった。代わりに、問いかけた。
「もし、もしさ」
照れくさくて、久々知の方を見ないようにまっすぐ前を見て歩いた。
「俺に彼女が出来たりして、一緒に帰れなくなったら久々知、どうする」
「出来たのか?」
「もしもの話だよ!」
「……そうだなぁ」
久々知は少し考え込んで無言になった。俺はその時間が酷く長く感じられて、昔スカートめくって無表情でみつめられたときなんかよりももっと長く感じられて、むず痒かった。

「嫌だなぁ」

ゆっくりと歩きながら、ポツリ、と小さな声で零されたその言葉が俺の耳に届いたとき、俺はなんだかこのまま走りだしてしまいたいような衝動に駆られた。今は、今はこれだけで十分だ、と胸中で何度も呟いた。何度も何度も呟いた。
「ごめんな久々知、変なこと言った。俺もお前の話聞きたいよ。だからずっと一緒に帰るよ」
「ホントか!」
よかった、と笑う久々知が愛しくて、胸がむずむずした。こんな笑い方、誰にも見せないでくれよ、と言いたくて、言える立場じゃない自分に腹が立って、いつか久々知の手を握ってみたいなぁなんてことを考えた帰り道は、いつもと少し違って見えた。
作品名:友達以上恋人未満 作家名:ノミヤ