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みとなんこ@紺
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Today's Military DOG Report

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・・・まぁあながちそんな事ないぞとは胸張って言い切れない言だったが。
そんな男の悲しいサガは子供たちには通じなかったらしい。弟は心持ち勢いに押されたかちょっとばかり身体を引き、兄はぎゅ、と非常に胡乱気に眉を寄せる。
「・・・何か少尉、大佐みたいなこと言うのな」
上があーだと皆似てくんの?とかなんとか。聞き捨てならない子供の切り返しに、それまでニヤニヤ笑いながら傍観していた周りの連中が「ちょっと待てぇぇ!」と一斉に立ち上がった。
「似てない!絶っ対似てないから!」
「あの人とだけは一緒にしてくれるな・・・!」
「あそこは特殊、あれだけは特殊なんだ大将・・・!」
「そうだ、大人が皆あんなんだと思っちゃいけねぇ!」
「昼会った相手と当日夜デート出来るなんてぜってぇありえねぇって・・・!」
「ちくしょー何であっちばっか行くかな・・・!」

瞬間で何か違う方面に火がついたようだった。

悪気無しに着けた本人が、ちょっと椅子ごと下がって距離を取ろうとするくらいには、ごうごうに色んな炎が燃え盛っている。もちろん、無駄に激しく虚しい炎の名は主に羨望だ。
・・・毎度の事だが、またえらいこと言われてるなー、うちのボス。
正直、既婚者の自分はそう周りが騒ぐほどには危機感はおぼえた事はない。まぁ移動してきたのがそんな前でないと言う事もあるかもしれない。それよりも、あの人が既婚者に色目使うようなそんな面倒な真似をするはずないと思うので。ぶっちゃけ、わざわざリスクを冒さなくても選り取り見どれるだろう。
だがマスタング大佐といえば、彼女GETを狙う独身男からすると、紛う方なき強大なボスキャラだというこもまた、間違いなく。
しかし、次々と上がる独身男の八つ当たりシュプレヒコールには、子供は何ら感銘を受けなかったらしい。実に微妙そうな表情で、猛る野郎どもを眺めながら、何やら納得いかなそうな表情だ。
「・・・別に司令部の中にも女の人はいるじゃん」
「いるにはいるがな!そういうトコには既にいるんだよ、虫が!」
寝てない連中は既に人の彼氏掴まえて虫呼ばわりだ。そろそろこの辺で止めておかないと、子供の教育上に悪いんじゃなかろうか、と思った瞬間。
その子供がのたもうた。
曰く、
「え、だったら中尉とか」





「・・・・・・。」
「・・・・・・。」





――――・・・大物だ。
まごうかたなき大物がいる・・・!
「中尉は・・・!いや、確かに美人だけど癒し、てのにはちょっと難し」
「あら。エドワードくん、アルフォンスくん」










ビキ、と。
音を立ててその場が固まった。















その場にいた全員が一瞬で凍りつく。もはや悲鳴を上げる余力も無い。(ちなみに逃げ出す余力も無い、というか今動けばその方がむしろ命が危ない気がする)
テロだの立て籠もりだのの現場がなんぼのもんだ、な位の極限な緊張状態。

ダメだ。ここはもはや戦場だ。一瞬の気の緩みが生死の分かれ目なんだ。オレたちの明日はどっちだ・・・!

みたいなカオをしている。たぶん自分も。
今こそ全員の心は一つだった。が、何ら救いは無い。
ちなみに全員固まったまま振り向けないでいるので見えないだろうが、こちらからはばっちり見える。国軍最強とか言われる東方軍司令官を唯一抑えることの出来る無敵の切り札、ホークアイ中尉は微笑んでいた。
それはもう麗しく、満面の笑みで。
・・・アレ、何だか、何処かで見たような気がする。
あー、あれうちのボスがテロリスト相手に最終通告出す時の笑いだ。ああもう、そっくり。子供の言っていることは正しい。ずっと傍にいれば似てくるものなんだ。
・・・とは思っても、即風穴が開くだろうからそんなこと口になぞ出せるはずもない。全員、冷や汗どころかもう搾れそうなほどに脂汗だらだらで。
だが、中尉はそんな張り詰めた空気をまったく気にした風もなく。
「久し振りね。今から大佐にお茶を入れようと思っているのだけど、向こうで一緒にどうかしら?」
ピキン、と付き合いよく一緒になって固まっていた兄弟だが、旅の間のお話も聞きたいわ、急ぎでなければいいのだけど、とか中尉が2人に向ける空気は全然暖かい。それを感じてちょっとばかり安心したのか、ぎぎぎと微妙にぎこちない動きで振り返ったちっさいほうの子供は、にへら、と力ない笑みを浮かべた。
「あー・・・っとそういや昨日のアレ、何か報告書とかって・・・」
「そうね。あとで調書だけ取らせてもらえるかしら」
「急いでるなら今からでもいっけど・・・」
あの鋼の錬金術師が下手に出ている・・・!と、普通ならここは驚愕する場面だが、現時点では誰もそこには突っ込めない。何せ、中尉はもう生物的において今ここにいる誰よりも上位にいる。この場にいる面々は誰も彼もそれを痛感している。はっきりしているのは、彼女の機嫌をこれ以上傾けてはいけないということ。

ああ、でも子供って良いなぁ・・・!
普段何とも思わないが、今だけは総じて切実に思った。
元々エルリック兄弟は、東方司令部ではマスコッ・・・もとい、名物ではあるのだ。ここの実質の責任者が後見人を務めている以上に、なんやかんやと世話を焼いているので、その辺が周りに感染するんだろう。皆、総じて甘かった。それは勿論、この鷹の目の女史も同じなので。兄弟だけは(色んな意味の)被害は受けない。決して。
それは今回も有効だったようだ。さっくりと保身に走ったというか危険を回避しようとした子供に向けて、中尉はさらに花の綻ぶような微笑を浮かべた。
「ありがとう。でも先にお茶にしましょう?とりあえず、休憩を挟まないといけないのよ。・・・そろそろお疲れでちょっと壊れそうだったから」


誰が。


とはもう誰も聞け(略
「これを持って執務室へ行っていてくれる?」
「あ、ボク持ちます!」
「よろしくね。大佐にコーヒーお持ちしますって言っておいてくれるかしら」
さっきの一言に込められた状況を正確に把握しただろう子供は、常に無い素直さでさっくりと立ち上がってコクコクと人形のように頷いた。
「助かるわ。2人が来てくれればきっと大佐も喜ぶから。・・・そう・・・」






「私は癒し向きじゃないみたいだから、ね」






ヒィ・・・!!
とっさに身体が動いたことにホント感謝する。
お疲れ様でした!とだけ投げかけて、寸での所で手を掛けたままにしていた扉を渾身の力で閉めた。