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君しか、いらな い 。

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以前、話の流れで、彼の弟の話になった際、偶然知った情報を、帝人は思い出す。
聞いた時は至極驚いたものだが、よくよく見れば、輪郭や口元などが似ている気もする。
だから、様子がおかしいと聞いて真っ先に帝人が思った事が、そうした業界に対する疲れやストレス、鬱だった。
だが、静雄は険しい顔をして首を横に振る。眉間の皺が、一層寄せられた。
「違うっ、違う!医者も、同じこと言いやがった。けど、絶対違う。弟は、幽は、確かに忙しそうにしてたし、疲れてる時もあっただろうが、でも、俳優業自体は凄く楽しそうにしてたし、漸く自分が生かせる場所が見付かったって、喜んでた。」
だから、それを自ずから放り出すようなことをする筈が無い、と。
鋭利な眼差しで帝人を射抜く静雄に、帝人は自身の弱さを見透かされた様な気がした。
膝の上で組んでいた両手に、ジワリと汗が滲む。
「・・・原因がその、サイトだという、根拠は?」
「弟が自室で倒れてたのを発見した時、デスクトップに表示されてたのが俺が言ってるサイトだ。どうも調べて貰った所だと、弟はそのサイトを相当の頻度で覗いていたらしい。」
「お気に入りのサイトなら、毎日見に行く位、不自然なことではないのでは?」
「・・・弟を病院に連れて行った翌日、弟が見てたURLに飛んでみたんだが、痕跡が、消えてた。」
ホームページのサイト自体が、消えていたのだと、静雄は言う。
それと今回の事件を結び付けるのは聊か不自然な点もある。
帝人の明るく無い表情を、これまでの推理が静雄のこじつけではないかと疑っているのだと思い、「まぁ、これは俺の勘の範囲、なんだけどな。」、と付け足し、顔を歪めると、振り上げた拳をソファに叩き付けた。
「それに、弟の件が実は初めてじゃ、無い。弟は運が良かっただけで、それ以前の被害者は、全員、死んでる。」
自殺だ、と、苦々しげに言葉を落とした静雄の表情は、それが例え赤の他人だと言え、刑事という立場から、正義感に燃えた感情が見て取れる。
「どうにもこの自殺騒動、繋がってる様にしか思えねぇ、と思って調査してみたら、案の定、1つのURLが発端だった。」
「あの、たかが探偵の僕に、そんな捜査上の情報を漏洩して良いんですか。」
「・・・あぁ、そうだな。これで、犯人が見付からなかったら、俺は始末書どころか、クビが飛ぶかもしんねぇ。」
ハハッ、と諦観した様な笑いを漏らし、静雄は帝人の目を真剣に見る。帝人はその強さに、ピクリと身動ぎした。
「でも、もう、お前位しか、頼れる人間が、居ないんだ。どうも今回の大元はびどく厄介みたいで、尻尾さえ掴めない。」
「あっ、いや、でも・・・・・・・・・」
眉を下げ、心底困惑している帝人に、静雄は綺麗の染められた金糸を思い切り揺らして頭を下げた。
「頼む!力を貸してくれ!いつまでも野放しにしとく訳にはいかねぇんだ。弟をあんな目に遭わせやがった奴を、1発殴ってやらなきゃ気が済まねぇんだ。」
「わぁっ!!へっ、平和島さん、止めて下さい・・・!」
焦って静雄に頭を上げてくれるよう頼むが、静雄は梃子でも動こうとはしなかった。
帝人は静雄の行動に慌てるその内側で、この事件に関する情報を脳内で整理・推察していた。
その嫌な予感が当たったならば、帝人も覚悟を決めなければならない時がやってくる。きつく唇を噛んだ。
本音を言うならば、関わりたくないのである。先程静雄が言った様に、自殺したという被害者の遺族が何人か訪れたが、帝人はその全ての依頼を丁重にお断りした程だ。
どれだけ罵倒されようとも、恨み辛みを投げられようとも、帝人は首を縦に振らなかったのだけれど。
(もう、潮時なのかも、しれない・・・)
必死に、なりふり構わず頭を下げ続ける静雄の姿を見て、キュッと握る手に力を込める。
震えそうになる唇を舌で濡らして、コクリと唾を飲み込んだ。
「・・・・・・・・・分かり、まし、た。」
囁かれた一言に、静雄が恐る恐るといった体で顔を上げる。
認めた帝人の表情は、泣き出しそうな、微笑みだった。
「お引き受け、しましょう。」
「っ、本当か!?」
「えぇ。弟さんを追い込んだ犯人を、見付けだしましょう。」
帝人の表情の意味を問うことも無いままに、静雄は、帝人の手を取って心の底から感謝した。



作品名:君しか、いらな い 。 作家名:Kake-rA