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自分の記憶には責任を持ちましょう

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「・・・しつこい」
 いい加減にしてくれとばかりに、臨也はうんざりとして表情を浮かべる。手には白い袋を下げ、中からはペットボトルや弁当がのぞいていた。どうやらコンビニに寄って帰ってきたらしい。
 ここは臨也の事務所のマンション前だ。
 昼間に逃げられてから、静雄はもんもんとしていた。
 沸点は低いが、熱しやすく冷めやすいのが静雄だ。いつもならある程度怒りを発散すれば収まるはすだった。
 しかしどういうことだろう。胸にくすぶった苛立ちは収まらない。どこか釈然とせず、すっきりしない。
―――よし、殴りに行こう。
 静雄の足は新宿へと向かっていた。
「池袋に行くときは、シズちゃんの仕事場所を調べて絶対近づかないようにしてるのにさ、なんでわざわざ来るわけ? ストーカー??」
「ふざけんな! 調べてって・・・てめぇのほうがストーカーだろうがぁ!!」
 そんなのことをしてまで、自分に会いたくなかっただろうか。
 その事実にショックを受けていることに静雄は愕然とする。
「何の用?」
「・・・わかってんだろう? あの夜のことだ。何があった」
「・・・・・・何のこと??」
 あくまで臨也はとぼけるつもりらしい。
「何のことって、俺と・・・その」
 静雄は直接的な言葉をいうの避けて、濁す。
 言葉にして、形にしてしまういろいろ開けてはいけない記憶を思い出してしまいそうになる。
 熱っぽい吐息、白い肌をすべる汗、それを静雄は―――。
 腹のそこから熱くなるような感覚に襲われる。背中からぞくぞくとしたものがかけあがる気がした。
 急に赤くなり押し黙った静雄をどう思ったのだろう。臨也がため息をついた。
「せっかく、なかったことにしてあげてたのに・・・なんで蒸し返すの、シズちゃん」
「うるせぇ!」
 熱くなった顔をごまかすように静雄は怒鳴るが、ごまかせたかは定かではない。
「シズちゃんよく思い出して。最初に絡んできたのは誰?」
「ああん? 知るか!」
「俺に絡んで、離さなかったのはシズちゃん―――君だよ」
 臨也が静雄を指しそう告げた。
「はぁ? 何を言ってやが・・・る?」
 その瞬間、静雄の記憶が一気によみがえる。
 あの日、臨也をつかまえた静雄は自分の腕に抱き込み、そのままホテルに連れ込んだのは・・・・・・静雄だ。
 リゴーンと静雄の頭の中で鐘が鳴った。