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[ギルエリで]お誕生日おめでとう!

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 行きたい理由はたくさんあったんだから、行かない理由にはならなかった。それに、プロイセンが迎えに来たんだと分かったから。
「お前が来ないから誕生日まだだと思っててヴェストに超怒られたぜ」
 プロイセンはつまらなそうに口をとがらせる。
「わ、私で判断してたの!?」
「俺よりお前のほうが正確に覚えてるじゃん、これに限っては」
 プロイセンはハンガリーさんに押し出されるままに梯子に手をかけ、そこでハンガリーさんが握りつぶしそうになっているうさぎのぬいぐるみに目を留めた。
「おっ、なんだこれ、さわり心地が俺好み」
 素早くハンガリーさんの手のひらからぬいぐるみを抜き取ると、プロイセンは満面の笑みでぬいぐるみを撫でくり回す。
「そ、それ、気に入った?」
 今を逃してはチャンスはない。ハンガリーさんは身を乗り出した。
「おう、色も白と赤で可愛いな」
「あげる」
「へ?」
「む、昔、日本さんちで買ったんだけど、飾ってなかったから、あんたにあげる。箱もあるの、ちょっと待って」
 ハンガリーさんはあたふたと箱と蓋を探しだして、プロイセンに押し付けた。
 プロイセンの胸に箱を押し当てる形になったハンガリーさんの額に、プロイセンがニヤリと唇を押し当てた。
「Danke!」
「ひ、ひゃぁぁぁー…」
 隙だらけのハンガリーさんの悲鳴はか細く、からかわれたことに気づいて正気に返ると同時にバーサクモードに入ったハンガリーさんよりも、なお迅速にプロイセンは自家用車に撤退していた。
「待ちなさいプロイセンっっ、あなたねえ」
 助手席に息を切らせて乗り込んだハンガリーさんに腕を回して引き寄せて、ついでにドアをバタンと閉めるとプロイセンがアクセルを踏み込む。
「なあハンガリー、今度あの部屋で使ってないもん何か持ってっていい?」
 シートにつかまってハンガリーさんが座りなおした頃に、プロイセンが尋ねたのでハンガリーさんは少し考えた。
「何かの記念日に、一つずつ持って行くんなら、いいわよ」
 プロイセンは結構嬉しそうだったので、ハンガリーさんはいたく満足しました。
 記念日当日はきっと自宅で祝うでしょうから、その前に家に来て選んでもらってもいいし、それならお菓子だけじゃなくてご飯を用意してもいいかもしれない。

――――奴が忘れるので、私が教えてあげることになりました。だから、メールもするし電話もするし、前日にちょっとお祝いを先取りしたりもするかもしれません。そのくらいの幸せを代価に要求しようと思うので、私は世界で一番貪欲なハンガリーです。

 
fin