二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

流星の軌跡

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
やあ、円堂くん。
さっき日本に帰ってきたばかりなのに、さっそく特訓かい?
え、違う?久しぶりに帰ってきたからここにきたくなった、か。
……俺も、一緒にいいかな?
うん、ありがとう。じゃあ、隣、失礼するよ。

俺、帰る前に、一度来てみたかったんだ、ここ。円堂くんのお気に入りの場所だ
ってきいていたからね。アジア予選中は、練習で忙しくて来られなくて。世界大
会がはじまってからは、日本に戻ってくることができなかったし。今日、来るこ
とができてよかったよ。
円堂くんはいつも、ここで特訓してるんだっけ。こんな素敵なところで特訓でき
るなんて、うらやましいよ。
え?俺も一緒に?すごくうれしいけど、明日は朝早く出発する予定だから無理か
な。せっかく誘ってくれたのに、ごめんね。うん、俺は明日帰るんだ。こんなこ
となら、ボールをもってくればよかった。
ああ、違う違う。富士山じゃないよ。今は別のところに、姉さんたちと住んでる
。姉さんは父さんの代わりに財閥の仕事をしなくちゃならないから、最近はすご
く忙しいみたい。それでいて、ネオジャパンの監督も引き受けるんだからすごい
よね。体を壊さないといいんだけど。

終わったんだね、世界大会。なんだか、すごくあっという間だった気がするよ。
響木さんに呼ばれて、この街に来たのがついこの間のことみたいだ。
もしかしたら、この大会が短かったんじゃなくて、その前の三ヶ月が長すぎたの
かもしれない。
うん、そう。君達と戦ってから、響木さんに呼ばれるまでの三ヶ月だよ。
何をしていたのかって?考えていたんだ。いろんなことを。
父さんが逮捕されて、俺は「グラン」じゃなくなった。そして、「吉良ヒロト」
の代わりでもない。じゃあ、俺はこれから、どうやって生きていけばいいんだろ
う、ってね。
ちょっと長い話になるけれど、よかったら、聞いてくれないかな。
……ありがとう。じゃあまずは、俺の昔の話をさせてもらうね。

円堂くんは、無戸籍者って知ってる?今の日本の法律では、人間が生まれたら必
ず出生届けを提出して、戸籍を作らなくちゃいけないんだ。だけど、親に何か事
情があって戸籍を作られなかった場合、戸籍のない人が発生する。それが、無戸
籍者。
何故こんな話をするのかって?
俺はね、父さんに出会うまで、戸籍がなかったんだ。つまり、生まれてからしば
らく、俺は公には存在していないことになっていた。ああ、そんな顔をしないで
。今はもう大丈夫だから。だから、ほら、こうしてライオコット島にも行けたじ
ゃないか。戸籍があるから、パスポートが作れたんだよ。

父さんと出会う前のことは、よく覚えていないんだ。
ただ、女の人がひとりいて、いろんな男の人が家にやってきたことは覚えている
。その記憶にどういう意味があるのかは、俺にはわからない。その人たちと、俺
がどんな関係を持っていたのかも知らない。本当は知っておくべきなのだろうけ
ど、こわいんだ。それに、詳しい事情を知ってる人は父さんしかいないみたいで
。だから、父さんが帰ってきて、俺に本当のことを知る勇気ができたら、そのと
きに聞いてみようと思う。

はっきりと覚えている中で、一番古い記憶は、父さんに名前をつけてもらったと
きのものなんだ。おひさま園に向かう車の中で、優しい声で「お前の名前は今日
からヒロトだよ」って俺に言ってくれた。そして、「これから行く場所には、た
くさんの仲間たちがいる。皆、それぞれの名前を持っていて、お互いのことを呼
び合っているんだよ」と教えてくれた。その頃の俺には、名前という概念が理解
できなかったけれど、父さんが優しい顔で教えてくれたのがうれしかった。
ああ、えっと、父さんに出会う前に俺と一緒にいた人たちは、俺のことを「あれ
」とか「それ」とかって呼んでいたんだ。だから、人間には名前というものがあ
ることを知らなかった。
よく考えると、当たり前だよね。自分が呼ばれることがなかったんだから。

おひさま園で暮らすようになってからは、驚くことばかりだったよ。
まず、自分と同じくらいの大きさの人間がたくさんいることにびっくりした。そ
れまで俺は、大人しか見たことがなかったからね。この世界に、俺以外の子ども
がいるだなんて、知らなかったから、最初はどうしていいかわからなかった。
それに、周りのみんなが優しいことにもびっくりした。父さんも姉さんも、園の
みんなも、俺に優しくしてくれたんだ。人間が、自分以外の人間に優しくできる
ということが俺には信じられなかった。
でも、優しくしてもらえるのはすごくうれしかった。いや、今でもうれしいよ。
だから、俺も、みんなみたいに優しい人間になりたいって思う。
……え、そうかな。ありがとう。円堂くんにそう言ってもらえるなんて、すごく
うれしいよ。

ええと、どこまで話したっけ……そう、お日さま園に来た頃の話だったね。

最初は戸惑いもあったけど、だんだんそれも消えて、数年が経つ頃にはお日さま
園での生活にすっかり慣れていた。仲間も増えたし、学校にも行くようになって
、すごく楽しかった。
そんなある日のこと、富士山に隕石が落ちてきたんだ。そう、円堂君も知ってい
るよね。エイリア石だ。
父さんは、エイリア石について調査を始めたようだった。そして、その結果はす
ぐに判明した。そこからお日さま園での生活が変わってしまったんだ。

まず、父さんは俺たちひとりひとりに新しい名前をつけた。わかりやすく言うと
、宇宙人ネームってところかな。そう、俺たちが君たちに最初に会ったときに名
乗った名前だよ。グランとかレーゼとか。ダイヤモンドダストのクララだけは、
本名と変わらない名前をつけられたけれど、他の者は本名とはまったく違う名前
をつけられた。そして、これからはその名前で呼び合うように言われたんだ。
それから、俺たちはみんな、サッカーを教えられた。父さんが雇ったコーチの指
導を受けながら、毎日毎日ボールを蹴って、練習をした。
どうしてこんなことをさせられるのか誰にもわからなかったけれど、俺たちはみ
んな満足だった。大好きな父さんに新しい名前をつけてもらえたし、父さんが施
設を訪れる度にサッカーの上達を褒めてもらえたからね。

ヒロトという名前が父さんの本当の息子の名前だって知ったのも、その頃だった
。施設にやって来た父さんが、吉良ヒロトくんの写真に向かって話しかけている
のを偶然見てしまったんだ。
その時は、とても驚いたよ。写真の中の彼が、あまりにも自分と似ていたから。
一瞬、父さんは俺の写真を見ているのかと思ったけれど、そんな写真を撮られた
覚えはなかったし、写真に語りかけている内容が明らかに俺に向けてじゃなかっ
た。しばらく話を聞いていると、彼はどうやらヒロトという名前らしいことと、
だいぶ前に亡くなってしまっているらしいということがわかった。
そこまでわかると、その先を推測するのは簡単だった。ヒロトというのは、亡く
なった息子さんの名前で、俺は彼にそっくりで、父さんはきっと俺に吉良ヒロト
くんの姿を重ね合わせて見ているのだろう、とね。
でも、それでも、構わなかった。どんな形であろうと、父さんに愛されるのはう
作品名:流星の軌跡 作家名:もちぐま