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流星の軌跡

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れしかったから。

だけど、その頃にはもう、俺はヒロトじゃなかった。グランというサッカープレ
イヤーだったんだ。
俺は心配になった。父さんは、ヒロトじゃない俺を愛してくれないのではないか
と。グランという名前を俺につけたのは父さんだが、それは、ヒロトとしての俺
がもう父さんには必要ないということなのではないかと。

だから俺は、グランとしても父さんに愛されたくて、サッカーの練習をがんばっ
た。ご飯のときと寝るとき以外は、ずっとボールを蹴っていたんじゃないかと思
う。

そのかいあってか、エイリア学園の組織作りのときに、俺はマスターランクチー
ムのひとつ、ガイアのキャプテンを任された。すごくうれしかったよ。父さんは
、グランとしての俺もちゃんとみてくれているんだってね。これからは、グラン
として生きていこうと思った。基山ヒロトとしてサッカーをしないと決めたのは
そのときだ。
そして、それからもジェネシスの称号を得るために、必死に練習したよ。父さん
が作ったエイリア学園の最強チーム。その称号を得ることが、俺たちお日さま園
のこどもたちにとって、どれだけ名誉なことか、円堂君、君に想像できるかな。
だけれど、今考えると、ジェネシスの称号は俺たちに与えられることが最初から
決まっていたのだと思う。他のチームがエイリア石を与えられてパワーアップし
ていく中、俺たちのチームは何も与えられずに、エイリア石で強くなった他のチ
ームと戦わせられたからね。すでにジェネシス計画は始まっていたんだ。最初は
、エイリア石を使っている他のチームにはまったく歯がたたなかったよ。だけど
、俺たちは訓練の末、何も使わずにエイリア石でパワーアップしたチームに勝て
るようになった。そして、ジェネシスの称号を得たんだ。

それからは君の知っている通りだと思う。俺たちは、エイリア学園の最強戦士と
して君たちと戦い、仲間の力の前に敗れた。
そして、父さんは逮捕され、俺は吉良ヒロトの代わりでもなく、グランでもなく
、基山ヒロトになった。
こんなに長い間生きてきて、やっと、自分自身の人生がはじまったんだよ。なん
だか、おかしいよね。

長々と話しておいて申し訳ないけれど、実は基山ヒロトとしての生き方は見つけ
られていないんだ。せっかく話に付き合ってくれたのに、ごめんね。
ただ、今回の大会は、とても楽しかった。基山ヒロトとして円堂君たちと一緒に
サッカーができて、本当によかった。ありがとう。
うん、そうだね、俺もこれで終わりにはしたくない。できたら、また、円堂くん
とサッカーしたいな。もちろん、基山ヒロトとしてね。

ああ、もうすっかり日が暮れちゃったね。そろそろ、宿舎に戻ることにするよ。

……最後にひとつだけ、お願いをきいてくれるかな。
俺の、基山ヒロトとしての人生を、君に見ていてほしいんだ。
全部とは言わない、君の負担にならない程度でいいんだ。だめ、かな……。

ありがとう、円堂くんはやっぱり、俺なんかよりずっと優しいよ。俺は、そんな
円堂くんが、大好きなんだ。

ははは、そろそろ行くね。
今日は、本当にありがとう。
じゃあ、またね。

作品名:流星の軌跡 作家名:もちぐま